剣客商売の番外編第二弾。しかし、実質剣客商売第二巻と考えて読むと、後のシリーズに繋がります。
さて、お福を連れて三浦平四郎が食べに行く先として、「鬼平犯科帳」でも馴染みの〔五鉄〕が登場します。
また、剣客商売の世界なので当然といえば当然なのですが、秋山小兵衛が馴染みの〔不二楼〕も登場します。
さらには、「仕掛人・藤枝梅安」等で馴染みの香具師の元締・羽沢の嘉兵衛が登場します。登場といっても例によって名前だけの登場です。
この羽沢の嘉兵衛、池波正太郎は様々な作品に登場させていますが、本人が登場することはほとんどありません。
本人を登場させないことにより、江戸の暗黒街に歴然たる勢力を誇る羽沢の嘉兵衛を強く印象づけています。
池波正太郎作品の中では、江戸の暗黒街の首領といえば羽沢の嘉兵衛なのです。
内容/あらすじ/ネタバレ
越後新発田の城下町。
お福は神谷弥十郎のところで女中奉公をしていた。ある事があって、お福は神谷弥十郎を憎むようになるが、その神谷弥十郎が殺された。殺
されたのと同じ時期に剣客の松永市九郎が姿を消している。
お福は身寄りがないため、神谷弥十郎のところで下男をしていた五平とともに江戸に出ることにした。そしてお福が奉公することになったのは三浦平四郎という御家人の隠居である。
ある日お福が目覚めてみると、三浦平四郎が何かを投げている。投げているのは手裏剣だった。この三浦老人がお福に試みに投げさせると、意外によく当たる。お福には天分の才があるようである。お福はこの三浦老人の手ほどきを受けることになった。
さて…。お福が使いに出た時のこと。お米に偶然出会い、その時に松永市九郎を見かけることになる。その時は嫌な人間を見たとしか思わなかった。
そのことがあった後のこと、秋山小兵衛が三浦平四郎を訪ねてきた。このとき小兵衛は五十三才であった。小兵衛は四谷の道場を閉めて、絵師の家を買い取り、そこに隠居するつもりでいる。
三浦平四郎は小兵衛から聞いた花駒屋という蕎麦屋で碁会所を開くと聞いて早速に行ってみる。この花駒屋は松永市九郎が常連としている店であった。松永市九郎は碁を打つのである。
松永市九郎が花駒屋に出入りしているのを知ったお福は嫌な予感にとらわれる。そして…
本書について
池波正太郎
ないしょ ないしょ
剣客商売番外編
新潮文庫 約三三五頁
長編
江戸時代 田沼時代
目次
汗
蜩
江戸の空
二年後
秋山小兵衛
基盤の糸
倉田屋半七
殺刀
二十の春
黒い蝶
谷中・螢沢
青い眉
登場人物
お福
五平
久助…五平の甥
お米…久助の娘
松永市九郎…剣客
三浦平四郎…御家人
倉田屋半七
富五郎
神谷弥十郎…剣客
羽沢の嘉兵衛…香具師の元締