覚書/感想/コメント
なるほどぉ、そうきたか!
坂崎磐音の今後の新たな道が指し示される作品である。(下記の内容紹介では、思いっきりネタばれをしているので、ご注意)
今回は佐々木玲圓道場のこけら落としに向かって物語が進んでいく。
この佐々木玲圓の佐々木家。元々佐々木家は直参旗本だったが、直参旗本を辞している。その真相はだれも知らないが、馴染みの速水左近など、幕閣の人間とも親密な関係があり、今も幕府と親密なつながりがあるという不思議な家柄である。
この幕府とのつながりに秘密があるような、臭わせ方を数作前からしているので、ちょいと、今後が気になるところである。
今後が気になるという点はもう一つある。今作で磐音を襲撃する相手。どうやら、裏に大きな人物が控えているようだ。
とはいっても、日光社参で、名前だけがチラホラ登場したある人物だろうというのは容易に想像がつく。
今後の磐音の新たな筋道と、強敵が指し示されており、ますます今後が楽しみなシリーズである。
さて、今回は久方ぶりに、笹塚孫一との掛け合いが見られて楽しかった。
「坂崎、行きがかりじゃ、もうしばらく付き合え」
「それがし、南町の者ではございませぬ。それに明日早く…」
やっぱり、これがないと、「居眠り磐音 江戸双紙」シリーズを読んでいる気にならない。
内容/あらすじ/ネタバレ
安永六年(一七七七)四月。
今津屋から仮奉公のおそめの姿が消えて、気抜けしたような寂しさが漂っていた。じきに、おそめの妹おはつが来ることになっている。
佐々木玲圓の新道場も完成が間近となり、玲圓は新道場に「尚武館」と名付けることにしていた。
そして、道場のこけら落としに佐々木道場の門弟だけでなく、江戸で名のある道場に広く声をかけ、対抗試合をするつもりでいた。
道場開きは、端午の節句あけの五月十日に決まった。
木下一郎太が今津屋を訪ねてきた。
佐渡の銀山で騒ぎがあり、佐渡に送られた五人の無宿者が騒ぎに乗じて逃げ出したという。
頭分の庚申の仲蔵らは、江戸に舞い戻って一度だけの大仕事をしのけて逃げるのではないかと睨んでいる。今津屋には気をつけてもらいたいというのだ。
その一郎太と磐音が今津屋を辞去して歩いていると、火事が起きた。大事にはならずに済んだものの、火元の店がひっそりとしている。不審に思って、中にはいると、番頭の長右衛門が殺されていた…
道場開きの行事を終えると、佐々木道場の師範・本多鐘四郎は少しずつ手を引くことが決まっていた。西の丸奉公の御納戸組頭依田新左衛門の息女・お市との祝言が決まっていたからだ。必然、磐音が玲圓の御用の代役やお供を務めることが多くなっていた。
そして、玲圓と磐音が東叡山寛永寺円頓院の座主天慧師に「尚武館」の揮毫を頼みにいった帰りのこと、磐音は玲圓から佐々木道場を継ぐつもりはないかと、驚くような話を聞かされる。
玲圓からの話を磐音は考えていた。おこんにも、そして、父・正睦にもそのことを相談せねばならない。こうした考えごとをしていたため、襲撃に一瞬気がつくのがおくれた。襲撃者が何者かは分からないが、磐音は浅からぬ傷を負ってしまう…。
傷は順調に治っていった。そうした中、木下一郎太が庚申の仲蔵が現れたと知らせてきた。そして、今津屋でも用心をすることになった。
佐々木玲圓道場のこけら落としが三日と迫り、出場者が出そろった。磐音は傷もあり、出場は見合わせることとなった。
そして、対抗試合が始まる…。
本書について
佐伯泰英
梅雨ノ蝶
居眠り磐音 江戸双紙19
双葉文庫 約三三〇頁
江戸時代
目次
第一章 番頭殺し
第二章 不覚なり、磐音
第三章 怪我見舞い
第四章 千面のおさい
第五章 四十一人目の剣客
登場人物
庚申の仲蔵
髪結の千太
野州無宿満五郎
都築重次郎
久保田幾馬
おさい
嵯峨一
長右衛門…番頭
天慧師…東叡山寛永寺円頓院の座主
酒井忠貫…若狭小浜藩主
篠田多助…若狭小浜藩士
朝倉軍大夫直兼
根来小虎…霞新流
柳生多門助…柳生新陰流
四出縄綱
シリーズ一覧
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- 意次ノ妄
- 竹屋ノ渡
- 旅立ノ朝(完)
- 「居眠り磐音江戸双紙」読本
- 読み切り中編「跡継ぎ」
- 居眠り磐音江戸双紙帰着準備号
- 読みきり中編「橋の上」(『居眠り磐音江戸双紙』青春編)
- 吉田版「居眠り磐音」江戸地図磐音が歩いた江戸の町