覚書/感想/コメント
シリーズ第十二弾。
本書では様々な恋模様が展開、もしくはこれから展開しそうな気配である。
まずは、今津屋吉右衛門。奉公人たちが後添えをと気を揉む中で、老分の由蔵が動き出す。これは吉右衛門が気づき、おこんの口を割らせてすでにばれてしまっていたのだが、後添えが決まりそうである。
一方、おこんの身の上にも、なにやらありそうである。どてらの金兵衛が娘を気遣って自ら動いているようである。
そして、織田桜子。磐音に惚れ込んでいる様子だが、果たしてこれからどうなることやら。この桜子には、桂川国瑞が思いを寄せている様子もあり…。
さて、本書の最後の章で関わりのある七福神。七福神参りは江戸時代に入ってから縁起担ぎと行楽を兼ねて生まれた風習のようだ。大黒天、恵比寿、毘沙門天、弁財天、福禄寿、寿老人、布袋和尚。これらが、神仏習合の習わしであることはいうまでもない。神仏習合については、義江彰夫「神仏習合」に詳しい。
そういえば、お寺を守るために建立された神社というものを見たことがある。日本の八百万の神々も、他国の神を守らなければならないとは複雑な心境だろう。
内容/あらすじ/ネタバレ
師走。内藤新宿で起きた押し込み強盗が話題に上っていた。真っ黒な頭巾を被っているところから黒頭巾といわれていた。そうした中、坂崎磐音は由蔵に鎌倉まで同行できないかと頼まれる。
今津屋に泊まった時のこと、火事が起きた。今津屋の方向には火が向かっていないので大事はないが、内藤新宿の一件が気にかかる。火事場に向かうと、南町の笹塚孫一が出張っていた。同じ思いで笹塚もでてきたらしい。
そのとき、木下一郎太が元大坂町の衣装屋に押し込みが入ったと知らせてきた。押し込みのあった衣装屋は主をはじめとして殺されていた。内藤新宿での一件とはどうも様子が違うようである。
磐音は由蔵と二人で鎌倉へ向かった。建長寺で吉右衛門の代参としての役目を終えると、由蔵は本当の目的を磐音に漏らした。
今津屋にとっての焦眉の急は吉右衛門の後添えである。今回鎌倉にきたのは、お艶の兄・赤木儀左衛門が小田原城下の脇本陣の主・小清水屋右七と娘二人を連れくるという。
その姉の香奈を吉右衛門の後添えにどうかというものである。吉右衛門には黙って行うのだが、磐音にも香奈の人柄をみてもらいたいという。
磐音と由蔵が六郷川を渡ったのは師走も半ば。刻限は七つ半を過ぎていた。鎌倉での首尾も上々で、後は吉右衛門の説得だけである。
どう切り出すかと思っていると、すでに吉右衛門はこのことを知っていた。というのも、由蔵の様子がいぶかしいのでおこんを問いつめたというのだ。
磐音は鎌倉土産を品川家に届けに行った。すると、幾代が心配そうな顔をしている。この数日柳次郎が戻ってないという。さっそく竹村武左衛門に探してもらうと、どうやら柳次郎はやっかいな事件に巻き込まれている可能性があるという。
磐音は大つごもりを明後日に控えた佐々木道場で汗を流していた。すると、道場の中でまるで軍鶏の喧嘩のような稽古をしている新弟子がいた。重富利次郎と松平辰平である。
この松平辰平はガラの悪い遊び仲間がいる。その仲間が道場まで押しかけて辰平を誘い出そうとする。だが、磐音と本多鐘四郎がたたき出した。
明けて安政五年。この辰平の姿が道場から見えなくなった。
本書について
佐伯泰英
探梅ノ家
居眠り磐音 江戸双紙12
双葉文庫 約三三五頁
江戸時代
目次
第一章 吉祥天の親方
第二章 水仙坂の姉妹
第三章 師走の騒ぎ
第四章 二羽の軍鶏
第五章 白梅屋敷のお姫様
登場人物
西郷政五郎
吉祥天の伯王親方
参造
赤木儀左衛門
小清水屋右七
香奈
佐紀
大塚左門
吉村作太郎
愛染明王の円之助
末松
歳三
本多鐘四郎
重富利次郎
松平辰平
おうめ
池内大吾
桂川国瑞
中川淳庵
織田桜子
田村義孝
おもよ