伊勢宗瑞(伊勢新九郎盛時)を主人公としたゆうきまさみ氏による室町大河マンガの第17巻です。
今回の舞台は文明19年/長享1年(1487年)~長享2年(1488年)です。舞台は駿河→京都です。
第15巻から始まった今川家のお家騒動のクライマックスですが、この巻にて終結となります。
この巻で、京から姉の伊都が駿河にやってきます。
北川殿(きたがわどの)や桃源院殿(とうげんいんどの)として呼ばれる人物で、龍王丸(今川氏親)の母親です。
昔は、新九郎の年の離れた妹とされ、今川義忠の側室とされていました。
しかし、近年の研究で、新九郎の生年が「新九郎 奔る!」でも採用されている康正2年(1456年)説が有力になってきたことから姉と考えられるようになってきました。
また、研究により新九郎が室町幕府の申次衆・奉公衆である名門・伊勢氏であることが定説となり、伊都が今川氏と婚姻する家格として釣り合いが取れていると考えられるようになりました。
今川義忠に伊都の他に正室にあたる女性の記録がないことから、伊都が正室と考えられるようになります。
さて、第15巻でも登場した足利茶々丸がこの巻でも登場します。駿河の動乱の始まりと終わりに足利茶々丸を登場させる当たり、にくい演出です。
舞台となる時代については「テーマ:室町時代(下剋上の社会)」にまとめています。
第17集の基本情報
関係年表
本書の舞台となるのは、1487~1488年です。新九郎は数え年で32歳です。
ーーー第17集はここからーーー
1487(文明19/長享1)
●将軍:足利義尚 ○管領:畠山政長⇒細川政元
◎古河公方:足利成氏 ○関東管領:上杉顕定
◎堀越公方:足利政知 ○関東執事:上杉政憲
【北条家】駿河へ下向した伊勢宗瑞が龍王丸を補佐する。石脇城(焼津市)に入って同志を集める。11月に兵を起こし、館を襲撃して今川範満とその弟・小鹿孫五郎を殺害する。龍王丸は駿河館に入る。
1488(長享2) 加賀の一向一揆
●将軍:足利義尚 ○管領:空位
◎古河公方:足利成氏 ○関東管領:上杉顕定
◎堀越公方:足利政知
【関東】長享三戦。長享の乱における戦。上杉顕定と上杉定正の間で行われた戦い。実蒔原の戦い、須賀谷原の戦、高見原の戦の3つの戦をいう。
【一向宗】加賀一向一揆。高尾城の戦(長享の一揆)。守護・富樫政親を追い払い約100年の間、自治を行うようになる
飯篠長威斉家直(剣豪)が亡くなる
ーーー第17集はここまでーーー
1489(長享2/延徳1) 足利義政が銀閣寺を建立
●将軍:足利義政 ○管領:空位
◎古河公方:足利成氏 ○関東管領:上杉顕定
◎堀越公方:足利政知
足利義政が銀閣寺を建立
物語のあらすじ
宴
新九郎が駿府館に向かって攻め込みました。
館にいる小鹿新五郎は、物見の報告で「対い蝶」の旗印が立っていると聞いて、愕然とします。
伊勢家の旗印…。新九郎は丸子にいたのではなかったのか…。
新五郎の前に、傷ついた孫五郎が現れました。孫五郎は味方だったはずの興津や庵原の一門が裏切ったことを悔しがっていました。
負けを悟った新五郎は館に火を放ちます。
宴の始末
数刻後。丸子館の龍王丸の前に新五郎と孫五郎の首が届けられました。
新五郎は、むめと竹若の処遇を言い渡しました。小鹿家は駿河守護家の今川家と血筋が近すぎることが、今回のような出来事を招いてしまったと新九郎は考えました。
新九郎は新五郎が病がちになってのち、駿府で主導権を握っていた福島修理亮を何が何でも捕まえようとしています。火種になるからです。
翌朝から新九郎の主導で論功行賞が行われました。
しかし、処遇に不服のあるものが叛旗を翻し、この年12月から翌長享2年にかけて鎮圧に忙殺されます。
伊都様降臨
長享2年の3月。
京にいたはずの姉・伊都が丸子にやってきました。
そして、龍王丸が元服するまで伊都が家長を務めることになりました。
これで一丸となった丸子勢は、矢部左衛門尉とその一族を追い詰め、福島修理亮も討ち取ることに成功します。
憂いが一つ消え、伊都は新九郎に富士下方の土地十二郷三百貫を与える約束をしました。
そして、伊都は亡くなった堀越源五郎の名跡を継がせるために、袋井の海蔵寺にいる一秀を呼びました。
新九郎はひと段落したことで、いったん京に戻ることになり、伊豆の足利政知に挨拶をし、伊豆北条にある円成寺にむめを訪ねました。
そして、足利茶々丸にも会って、京へ戻りました。
鈎の陣にて
京に戻ると伊勢貞宗から足利義尚の体調が良くないと聞きます。後継はまだいません…。