長谷寺の観音山の裾野に広がる下境内
伝承では長谷寺の創建は奈良時代です。
「長谷寺」と書かれた赤い提灯のぶら下がる山門を入っていくと、下境内には妙智池と放生池の2つの池が配され、周囲を散策できる回遊式庭園となっています。
長谷寺のご本尊「十一面観世音菩薩」は2021年に造立1300年を迎えました。それを記念して、山門には通常の赤い提灯では無く黄金の提灯が掲げられました。
この下境内を中心として「花の寺」の世界が広がります。
弁天堂は山門を入って右手に位置し、空海(弘法大師)が刻んだという伝承をもつ弁才天像(宝物館に収蔵)を祀っています。
八臂の弁財天像は、弘法大師が廻国修行の折、岩窟に参籠し感得して自ら刻まれたといいます。江戸時代には「出世弁財天」の名で知られていたそうです。
尊像は宝物館に収蔵され、通常非公開。代わりに「福徳弁才天」がお祀りされています。
弁天窟
堂の近くに弁天窟があります。弘法大師参籠の地と伝わります。
窟内壁面には弁財天とその眷属である十六童子が彫られています。
弁財天と同じ神様とされる民間信仰の宇賀神(人頭蛇身)もお祀りされています。
大黒堂には本尊に代わり、「出世・開運授け大黒天」や「さわり大黒天」が祀られています。
鎌倉・江ノ島七福神巡りの一つとして親しまれています。
長谷寺伝世の大黒堂像は、室町時代の応永十九年(1412)の銘を持つ神奈川県でも最古の尊像で通常非公開です。
長谷寺の上境内
上の境内には、本尊である十一面観音菩薩像(長谷観音)のある観音堂があります。
奈良の長谷寺の観音像と同じ、右手に数珠と錫杖、左手に水瓶を持つ長谷寺式。像高9.18メートルの巨像で、木造の仏像としては日本有数。
阿弥陀堂には厄除阿弥陀と呼ばれる阿弥陀如来坐像があります。鎌倉六阿弥陀に数えられます。
高徳院の「鎌倉大仏」、光触寺の「頬焼阿弥陀」、光明寺、浄光明寺、宝戒寺の阿弥陀如来像等。像は長谷にあった誓願寺(廃寺)の旧仏で、源頼朝が造立した像という伝承があります。
大黒堂には鎌倉・江ノ島七福神の1つに数えられる大黒天像がありますが、現在は新しい大黒天像が祀られています。
この上境内の見どころは、鎌倉の海と街並みが一望できる「見晴台」と、長谷寺を有名にしている「アジサイの径(こみち)」の「眺望散策路」です。
眺望散策路の周辺には40種類以上約2500株のアジサイが群生しています。
鐘楼の梵鐘は、鎌倉時代の文永元年(1264)鋳造の銘を持つ、鎌倉でも3番目に古いものです。昭和28年に国の重要文化財に指定され、現在は宝物館において収蔵展示中です。
20年程前までは「時の鐘」として実際に撞いていたそうです。現在の梵鐘は昭和59年に新鋳されたものです。
山号 海光山
宗派 浄土宗系単立
本尊 十一面観音
創建年 伝・天平8年(736年)
開山 伝・徳道
開基 伝・藤原房前
正式名 海光山 慈照院 長谷寺
別称 長谷観音
札所等 坂東三十三観音4番、鎌倉三十三観音霊場4番、鎌倉・江ノ島七福神(大黒天)