安藤優一郎の「江戸城・大奥の秘密」を読んだ感想

この記事は約3分で読めます。
記事内に広告が含まれています。

覚書/感想/コメント

大奥というのは実際にどんな空間であったかというのは今もって(本書は2007年出版)よく分からないのが実情だという。

大奥に勤める女性は、御杉戸から内のことは他言しないという誓紙提出が義務づけられており、この守秘義務が大奥の謎を増幅させている。なお、守秘義務は大奥に限らず、江戸城中に勤務する幕府役人についても同じであった。

大奥がどのような世界だったかが分かりづらいのは、大奥に勤めた女性の証言や記録類が極端に少ないことも一因だという。

だが、これ以外に多くに関する叙述というのはかなり見られ、そうした史料から大奥を垣間見ることができるそうだ。

大奥は幕府政治に隠然たる実力を誇っていた。その政治力の源泉は、将軍の生活と一体化しているところにある。将軍の権力は現在考える以上に強烈だった。

そのため、大奥は政治史の節目節目に登場する。それは改革の名を冠する政治などの場合に顕著だった。

八代将軍徳川吉宗が行った享保の改革以外の、寛政の改革、天保の改革は大奥からくずれて頓挫している。大奥は改革政治にとっては最大の抵抗勢力であった。

逆にこの大奥の力を利用すればのしあがることもできた。実際にそのような人物もいる。

本書では江戸のロイヤルブランドとしての大奥から江戸の社会を覗き見ることを主眼としている。

*詳細な目次は次の通り

まえがき-江戸のロイヤルブランド
第1章 大奥炎上-激動の始まり
 (1)ある高級女性官僚の生涯
   江戸城燃ゆ/将軍家御典医の娘/十二歳で召される/侍女つきの宿下がり/父への思い
 (2)てやの死
   運命の日/一命を賭して/形見の手紙/そのころの女の心もち
第2章 奥女中の謎の生活-虚実ないまぜの空間
 (1)手厚い待遇
広壮な建造物/出入りご免の男/奥女中のへそくり/一生支給の最上等米
 (2)大奥の四季
かさむ交際費/親のスネかじり/献残屋/ハレの日/観音様
第3章 絶大な政治力-伏魔殿の暗闘
 (1)表向きの人々
   将軍側近との連携/闇将軍・中野石翁/江戸勤番侍の大失態/斉昭復権工作/神様となった奥医師
 (2)改革政治の抵抗勢力
   松平定信の登場/将軍の心得/大奥の横槍/政変と御庭番/定信、激怒す/「大奥辞令」/倹約の強制/
定信の解任
 (3)妻たちの代理戦争
   流れ込む賄賂/菓子御用達の奪い合い/凮月堂と島津家
第4章 逃げる大名-莫大な出費
 (1)島津家の政略結婚
   竹姫の輿入れ/田沼意次に急接近/宝暦治水の教訓/諸大名の猛反発/一橋家の不満
 (2)招かれざる御守殿
   嫁ぎ先の気苦労/御守殿に入る/ミニ大奥の移転/足りない化粧料/幕府の見せしめ策/天下の人心を失う
第5章 寺社との蜜月-江戸の女性たちの外出
 (1)集客合戦
   双方にメリット/成田山、江戸城へ/川崎大師の名声/葵ブランド
 (2)感応寺の興廃
   日蓮宗の悲願/地固めの熱狂/押し寄せる参詣者/地域経済の活性化
夢の跡
 (3)大奥の口添え
   浄光寺の再建願い/吉宗の鶴のひと声/奥女中たちの募金
第6章 天璋院篤姫の輿入れ-伝説の誕生
 (1)動揺する大奥
   旗曼荼羅にすがる/異国船退散の祈祷/退職手当のカット/南紀派対一橋派
 (2)将軍のいない大奥
   和宮、御台所に/将軍の上洛/天璋院の発言力/帰らぬ将軍/江戸城放火/大奥最後の日

本書について

江戸城・大奥の秘密
安藤優一郎
文春新書 約一七五頁
解説書

目次

まえがき
第1章 大奥炎上-激動の始まり
第2章 奥女中の謎の生活-虚実ないまぜの空間
第3章 絶大な政治力-伏魔殿の暗闘
第4章 逃げる大名-莫大な出費
第5章 寺社との蜜月-江戸の女性たちの外出
第6章 天璋院篤姫の輿入れ-伝説の誕生

タイトルとURLをコピーしました