覚書/感想/コメント
スティーブン王と女帝モードの王位を争う情況は解決の兆しがない。
スティーブン王は南部一帯と東部の大半を支配し、女帝モードは南西部に身を落ち着かせている。この所は静けさを取り戻している。
さて、今回の重要な登場人物として、マーク助祭とオエイン・グウィネズがいる。
マーク助祭は「修道士の頭巾」「聖ペテロ祭殺人事件」でカドフェルの助手として登場し、オエインは「死者の身代金」で登場している、懐かしい人物達である。
今回は、この二人の活躍、特にマーク助祭の活躍が目立ち、カドフェルの活躍はほとんどない。
また、場所もシュルーズベリからは遠く離れた場所での事件であり、お馴染みのヒュー・ベリンガーは登場しない。
馴染みの場所や面々が登場しない寂しさはあるものの、いつもの空間から離れたところが舞台になるのも、それはそれで楽しく読めるものである。
内容/あらすじ/ネタバレ
かつてシュルーズベリ修道院でカドフェルの助手を務めていたマーク修道士がロジャー・ド・クリントン司教の使いとしてやって来た。
彼は長年休止状態にあったセント・アサフの司教区が復活し、その司教に任命されたギルバート司教への支援の意思表示をするための使いと、もう一つ別の使いのためだった。
その途中の宿泊のためにシュルーズベリ修道院に寄ったのだ。
そして、もう一つ大きな目的は、カドフェルを借受けることだった。セント・アサフの司教区はウェールズにあるため、ウェールズ語に堪能な人物の通訳が必要なのだ。
かくして、カドフェルはかつての仲間とともに旅に出ることになった。
マークはギルバート司教に会い、使いとしての使命を果たした。
そして、その場に同席していたオエイン・グウィネズの領地へと赴いた。それはもう一つの使いのための通り道に位置していたからである。
だが、そのオエインのところに泊まっている最中に、大変な知らせが届く。
それはデーン人が襲撃のためにやって来ているというのだ。そして、それと同じくしてオエインの足許で殺人が行われた。
犯人探しが必要であるが、デーン人の襲撃にも備えなければならない。
オエインは犯人捜しはデーン人の襲撃の後にきっちりと捜査することを約する。
その翌日、オエインのもといなくなった者がいた。それはメイリオン聖堂参事会員の娘・ヘレズであった。
カドフェルとマークはオエインのもとを去り、マークの次の使いのために出発した。
途中で、カドフェルが運良くヘレズを見つけ出すことに成功するが、見つけた直後にデーン人に見つかり、そのまま捕虜となってしまう。マークはその様子を遠目に確認した。
マークはどうするのか。そして、オエインのもとで起きた殺人事件はどうなるのか。
本書について
エリス・ピーターズ
デーン人の夏
光文社文庫 約380頁
12世紀イギリス
登場人物
カドフェル…修道士
マーク…助祭
ギルバート…司教
メイリオン…聖堂参事会員
ヘレズ…メイリオンの娘
モーガント…聖堂参事会員
オエイン…グウィネズ領主
ヒウェル…オエインの息子
キューエリン…オエインの部下
キャドウォラダ…オエインの弟
ブレドリ…キャドウォラダの家来
グウィオン…キャドウォラダの家来
ユーアン…ヘレズの婚約者
オティア…デーン軍の統率者
ターカイル…オティアの部下