中世の時代において、戦争で捕虜になったものは、それが身分のある者である場合、身代金もしくは捕虜交換の道具として貴重でした。
捕えた相手が王などであれば、莫大な身代金が手にはいるため、丁重に扱ったようです。
この様な、当時の戦争時における”しきたり”が本書において詳しく書かれています。
ある意味、当時の西欧での戦はのんびりした部分があったように感じます。
ただし、このことは身分のある者に限られた話で、捕虜としての価値のない者に対しては、結構残酷であったようです。
“暗黒の中世”と言われた時代の一面が垣間見られる作品です。
さて、本書では、久方ぶりにマグダレン(第5巻「死を呼ぶ婚礼」でエイヴィスと名乗っていた)が登場しました。
それなりに修道女として板に付いてきたようで…。
また、長らく活躍してきた、州執行長官が殺されてしまいます。ヒュー・ベリンガーが昇格するのでしょうか?
内容/あらすじ/ネタバレ
イングランド王位僭称者スティーブンと女帝モードの争いが激しくなり、ギルバート・プレスコートと共に戦場にたったヒュー・ベリンガーは、戦いが終わり戻ってきた。
しかし、プレスコートは捕虜としてウェールズ側に捕えられた。
その頃、マグダレン修道女がやってきて、ウェールズの若者を捕えたと告げる。
その若者は身分ある者だったため、プレスコートとの捕虜交換はまとまった。
プレスコートは怪我で衰弱しており、一端修道院で休んでいた。そして、修道院でプレスコートは何者かによって殺された。
まだ、捕虜の交換は正式には終わっていなかった。
いったい誰が、何のためにプレスコートを殺したのか?
本書について
エリス・ピーターズ
死者の身代金
光文社文庫 約320頁 12世紀イギリス
登場人物
カドフェル…修道士
ラドルファス…修道院長
マグダレン…修道女、第5巻「死を呼ぶ婚礼」でエイヴィスと名乗っていた
オエイン・グウィネズ…グウィネズ領主
グリフィス・アプ・メリル…オエインの騎士
イリアド・アプ・グリフィス…グリフィスの息子
イリス・アプ・キーナン…グリフィスの里子
チューダ・アプ・リース…トレゲイリオグ領主
クリスチナ…チューダの娘
エイノン・アプ・イテル…オエインの親衛隊長
ギルバート・プレスコート…州執行長官
シビラ…プレスコートの妻
メリセント…プレスコートの娘
アニオン…牧夫
ヒュー・ベリンガー…執行副長官