あっという間に読み終わるような、ごくごく短い短編集です。
最後の「偉丈夫」は、漆蝋を廻る国境の問題をテーマにしており、何となく「漆の実のみのる国」を彷彿させます。
内容/あらすじ/ネタバレ
岡安家の犬
海坂藩の近習組の岡安家は、当主の岡安甚之丞を含め犬好きであった。家ではアカという名の犬を飼っている。
ある日、道場の仲間の鍋に誘われて甚之助は関口兵蔵の家に向かった。そこで出てきた鍋は犬鍋だった。しかも、野地金之助が言うにはアカを鍋にしたというのだ。
激怒した甚之助は野地金之助と妹・八寿の縁談を反故にすると言い捨てる。
静かな木
布施孫左衛門の息子・邦之助が、中老・鳥飼郡兵衛の息・勝弥と果たし合いをするという。理由を聞いてもはきとは答えず、ただ侮られたからと言う。
孫左衛門は、かつて鳥飼郡兵衛の失態をかばったことがある。それがために家禄は減らされた。今となっては忌々しいことである。その上に、今度は息子が果たし合いとするというのだ。何が何でも、果たし合いを辞めさせなければならない。
偉丈夫
海上藩の片桐権兵衛に課せられた使命は、支藩の海上藩と本藩の海坂藩の国境問題である。その体の大きさといい偉丈夫たる片桐権兵衛だが、実は大きな欠点があった。
本書について
藤沢周平
静かな木
新潮文庫 約一一五頁
短編集
江戸時代(海坂藩もの含む)
目次
岡安家の犬
静かな木
偉丈夫
登場人物
岡安家の犬
岡安甚之丞
岡安十左衛門…隠居
八寿…妹
アカ…犬
野地金之助
関口兵蔵
静かな木
布施孫左衛門…隠居
権十郎…息子
邦之助…息子
鳥飼郡兵衛…中老
勝弥
偉丈夫
片桐権兵衛
加治右馬之助