短編6作。武家ものと市井ものが織混ざった作品集です。
「竹光始末」「恐妻の剣」「乱心」「遠方より来る」が武家もの、「石を抱く」「冬の終りに」が市井ものとなります。
また、「竹光始末」「遠方より来る」が海坂藩を舞台にしています。
なお、「遠方より来る」は「雪明り」(講談社文庫)にも収録されています。
さて、2002年の映画「たそがれ清兵衛」(主演:真田広之、宮沢りえ。第76回アカデミー賞外国語作品賞ノミネート。)の原作となるのが、本書収録の「竹光始末」と「たそがれ清兵衛」「祝い人助八」(それぞれ「たそがれ清兵衛」に収録)です。
内容/あらすじ/ネタバレ
竹光始末
海坂藩に辿り着いた小黒丹十郎は浪人の身であった。海坂藩で新規の召し抱えを行っているというので、推薦状を持ってやって来たのだ。相手は柘植八郎左衛門である。
しかし、柘植八郎左衛門にとっては迷惑な話だった。というのも、新規の召し抱えはとっくに終わっていたからである。
そうはいうものの、一度小黒丹十郎と会う事にした。会ってみて分かったのは、小黒丹十郎という男は非常に潔いという事であった。そのため、柘植八郎左衛門は小黒丹十郎のために一肌脱ごうと思った。
恐妻の剣
馬場作十郎は、妻・初枝の尻に敷かれている。そのため、子供達からも軽く見られている節がある。その馬場作十郎に、ある命が下った。
それは、藩で預かっている人間三人のうち二人が逃げたので、連れ戻せというものだった。もし、手に余るようであれば切手捨てても構わないものだった。
石を抱く
直太は博奕の世界から足を洗って、ある店で働いている。その店の女将の弟というのがヤクザなやつで、度々店にやってきては金をせびって帰った。この事を知った直太はひとつ、この弟に釘を刺そうと考えた。
冬の終りに
磯吉はなれない博奕で五〇両も勝ってしまった。実は胴元がわざと勝たせたのだが、そうとは知らない磯吉は勝ったまま帰ってしまった。すかさず胴元の下のものが磯吉を追う。追われているのに気が付いた磯吉は恐くなって、必死に逃げる。そして逃げた先でお静と出会う。
乱心
新谷弥四郎は剣友の清野民蔵の事が心配であった。それは、清野の妻女・茅乃に不義の噂があったからである。いつ清野が逆上するのか心配していたが、その心配は杞憂で終わったようだった。そのうち、新谷も清野も江戸詰めになり、江戸に赴く。
遠方より来る
海坂藩士の三﨑甚平のもとに、かつて戦場で知り合った曾根平九郎が転がり込む。海坂藩への仕官のためだ。豪快な印象の平九郎だが…
本書について
藤沢周平
竹光始末
新潮文庫 約二六〇頁
短編集
江戸時代(海坂藩もの含む)
目次
竹光始末
恐妻の剣
石を抱く
冬の終りに
乱心
遠方より来る
登場人物
竹光始末
小黒丹十郎
柘植八郎左衛門
余吾善右衛門
恐妻の剣
馬場作十郎
初枝…作十郎の妻
森本麓蔵
平賀
菅野甚七
石を抱く
直太
新兵衛
お仲
菊次郎
権三
冬の終りに
磯吉
富蔵
お静
袈裟次
乱心
新谷弥四郎
清野民蔵
茅乃…清野民蔵の妻
遠方より来る
三﨑甚平
曾我平九郎