職人のような作品を作る事が多い藤沢周平としては、意外に派手な印象があります。
ですから、一度読んでしまうと、はっきりと粗筋が頭に残ってしまいます。
そういう意味では映像化しやすい内容だとも言えます。
藤沢周平を始めて読む人にとっては、読みやすいし、話の展開も分かりやすいので、おススメです。
また、サスペンスとしても面白く構成されているので、サスペンスが好きな人にもおススメです。
内容/あらすじ/ネタバレ
長屋でいつもたたずむ女がいる。名をおくみという。不義の噂が立ち、夫が家に入れてくれないのだ。長屋の皆が知っている事だ。今日もおくみが来ている。佐之助は自分に関係のない事と思っている。
佐之助は奥村という男から仕事を請け負っている。その仕事は、人を脅したりするヤクザなものだった。その佐之助が一息つくのが、おかめという酒亭である。
そこにはいつもの馴染みの客がいる。三十過ぎに見える浪人ものと、白髪の年寄、商人風の若い男である。しかし、それぞれと話を交した事がない。それでも、佐之助には居心地がいいのである。
そのおかめでたまに見かける男が声をかけてきた。伊兵衛というその男は、盗みの手伝いをしないかというのだ。盗みは簡単でしくじる事はないという。しかし、佐之助は断った。
雨が降った日に、佐之助は雨の中をとぼとぼ歩くおくみを見かける。おくみを家に連れて帰り、暖を取らせるが、おくみはそのまま熱で倒れてしまう。介護をしている内に、薬代等で出費がかさんだ。
佐之助は、伊兵衛の話に乗る事にした。そして、伊兵衛が引き合わせたのが、おかめでいつも見かけている馴染みの客の連中であった。それぞれに止むに止まれない事情を抱えているのだろう。
そして、押し込みの日になった。
本書について
目次
誘う男
酒亭おかめ
押し込み
ちぎれた鎖
登場人物
佐之助
おくみ
伊兵衛
伊黒清十郎…浪人
静江…伊黒の妻
仙太郎…商人
おきぬ…仙太郎の情婦
弥十…白髪の老人
新関多仲…南町奉行所同心
芝蔵…岡っ引
きえ
奥村