覚書/感想/コメント
梅安は大根が好物。彦次郎は豆腐が好物。小説を読んでいると、大根と豆腐が頻繁に出てくる。
さて、本書は最初に池波正太郎による梅安の世界を簡単に述べた章があり、その後に佐藤隆介・筒井ガンコ堂による「仕掛人・藤枝梅安」に登場する料理を紹介している。惜しむらくは、写真が掲載されていない点か。
さて、本書では蘊蓄話として、醍醐味の醍醐の意味や味噌という名前の由来が述べられている。こういう雑学もなかなか楽しい。
ピックアップ
「池波正太郎・梅安を語る」
池波正太郎が仕掛人・藤枝梅安の世界を語る。
食べ物に関して、
そば、鮨、天ぷら、鰻が江戸の食い物の代表のようにいわれているが、これは明治以降のことで、それまでは江戸前の魚を主体にした料理だったそうだ。
変わったところでは、鳥肉の中でも、大名は鶉や鶴を食していたとのこと。
戦国時代以前は酒は高価なものであり、それは江戸時代でも変わらなかった。「飲む、打つ、買う」といわれる三大道楽は酒と博奕と女遊びを指すが、当時は酒で身代を潰すことがあり得た。現在とは大きく違う。
旅の心得として、
旅の時の心得として、初日・二日目は無理をしないことだと、述べている。これは自身の実体験からもそうであると断言している。
木賃宿の由来も述べている。文字通り、木の賃、つまり薪代だけを意味し、自炊が前提の宿を木賃宿といっていた。
女性について、
池波正太郎の描く女性は、むっちりとした肉付き豊かな女性が多い。それは戦前まではそれが美人の標準だったからだという。
美人の基準は時代と共に変わるとはいうのは本当で、一度美人の類型を時代ごとに追いかけてみると面白いかもしれない。もし、そのような本があればの話しだが…
佐藤隆介・筒井ガンコ堂による「仕掛人・藤枝梅安」に登場する料理を紹介
「貝柱飯」
この貝柱は青柳の貝柱を指す。貝柱のかき揚げは絶品である。
「白魚鍋」
シラウオとシロウオ。とても紛らわしい。が、ここで述べているのはシラウオ科のシラウオ。一方はハゼ科のシロウオで、生きたままのおどり食いをする。味わったことがないが、個人的には食さなくてもよいかなと思うものである。
「兎汁」「猪鍋」
肉類は「薬喰い」と称して賞味されたものらしい。薬と称することで宗教上の禁忌から放たれるという飛び技である。そのため、猪を山鯨とよび、兎は鳥の仲間とみなして一羽、二羽と数えたようである。そして、猪はぼたん、牛は冬ぼたん、鹿がもみじと呼ばれた。日本人らしい融通のきかせかたである。
「菜飯田楽」
おでん。もともと関東で生まれたものが、関西に伝わり「関東煮」と呼ばれて発達してお座敷おでんとなる。そして関東に逆輸入された。
「蕎麦と蕎麦屋」
ここで神田「まつや」が紹介されている。「まつや」自体が有名店だが、すぐ近くに他の某有名蕎麦店がある。比較するに、「まつや」の方が味が上で、値段もリーズナブルである。私は蕎麦を食したくなったら「まつや」に度々出かける。
本書について
池波正太郎他
梅安料理ごよみ
佐藤隆介・筒井ガンコ堂編
書かれた時期:-
刊行:1984年5月
講談社文庫 約二七〇頁
目次
池波正太郎・梅安を語る
春
貝柱飯
鶏卵
鰻
白魚鍋
〔井筒名物〕鯨骨の吸物
兎汁
夏
鰹の刺身
鰹の刺身と鰹飯
芋川のうどん
焼むすび
熱海の温泉と酒と魚と
角樽
蝦蛄の煮つけ
鮑の酢貝
白玉
秋
秋茄子の塩もみ
桑名の酒、魚
松茸
菜飯田楽
軍鶏
豆腐の葛餡かけ
蜆汁
蕎麦と蕎麦屋
根深汁付大根浅漬
冬
猪鍋
沙魚
大根と油揚げの鍋仕立て
豆腐
朝飯
大根鍋 二種
根深汁
おかか雑炊
鯛
晦日蕎麦
茶わん酒
掻鯛
浅蜊と大根-小鍋だて
白魚