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池波正太郎「鬼平犯科帳 第16巻」の感想とあらすじは?

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新婚の木村忠吾ののろけ振りが微笑ましい作品です。

例えば”白根の万左衛門”。

新婚の木村忠吾はのろけ話をしたくてしょうがないのですが、のろけ話をし過ぎたために、のろけ話を聞かせる相手がいなくなった忠吾が、こともあろうに長谷川平蔵宣以にのろけ始めます。

その時の平蔵の対応が面白いのです。

「どのように可愛がる?」
 (中略)
「あの、先ず、口を吸ってやりまして…」
「口を吸うとは、どのようにするのだ?」
「はあ…?」
と、忠吾め。毒気をぬかれてしまった。
「申せ。申せよ、これ…」
「それは、あの…」
「お前が、どのようにして新妻の口を吸うのだ?そういう口つきをしてみろ」
「う…」
(-以下省略-)

忠吾も平蔵相手では如何ともし難いようです。

さて、平蔵のこういうあしらい方は、日常においても、意外と応用が利くかも知れません。

内容/あらすじ/ネタバレ

影法師

木村忠吾と吉田藤七の娘・おたかとの婚礼が近づいていた。これで遊べなくなると思った忠吾は、品川の女郎屋へと繰り出す。しかし、途中で叔父の中山茂兵衛と出会ってしまう。何とか逃げ出そうとするが、妙案が浮かばない。

その忠吾をみていたものがいる。そして忠吾をさむらい松五郎と勘違いした。さむらい松五郎は火盗改方が既に捕まえているのだが、それほどに忠吾はさむらい松五郎に似ているらしい。

網虫のお吉

小柳安五郎は隣部屋の様子を窺っていた。隣部屋にいるのは同僚の黒沢勝之助と、女盗賊の網虫のお吉である。しかし、様子が変である。黒沢勝之助は網虫のお吉を嬲っているのである。弱みにつけ込み、網虫のお吉の体を頂いているらしい。気が重いながら小柳安五郎はこの事を平蔵に報告する。

白根の万左衛門

平蔵が見舞いで外に出た先で、馬蕗の利平治がスッとやって来て見えている男女が白根の万左衛門の配下であることを教えてくれた。

その白根の万左衛門だが、病に倒れてしまい余命幾ばくもない状況である。その様子を見て、一味の者の動向が騒がしくなっているのに白根の万左衛門は苦笑をしている。一味の者が騒いでいるのは、白根の万左衛門が貯め込んでいると噂されている金がどうなるかということであることは想像つくからだ。

火つけ船頭

常吉はむしゃくしゃして火つけをしようとしていたが、そこに怪しい人影が現れた。常吉が火つけをしようとした家に押し入ったのである。その中に、常吉の女房を寝取った西村虎次郎の姿があった。

見張りの糸

彦十が持ってきた情報は、稲荷の金太郎という盗賊を見たというものだった。早速その稲荷の金太郎を見張ることにした。見張り場に選ばれたのは和泉屋忠兵衛の店だった。しかし、実はこの和泉屋忠兵衛はもと盗賊であったのだ。

一方、珍しい客が来た。京都町奉行所の与力・浦部彦太郎である。

霜夜

昔、平蔵が実の弟のように可愛がった池田又四郎を見かけた。しかし、平蔵は声をかけず、後をつける。何か昔見知っていた頃の池田又四郎とは雰囲気が違うからだ。

本書について

池波正太郎
鬼平犯科帳16
文春文庫 約三〇〇頁
連作短編
江戸時代

目次

影法師
網虫のお吉
白根の万左衛門
火つけ船頭
見張りの糸
霜夜

登場人物

影法師
 中山茂兵衛…忠吾の叔父
 塩井戸の捨八…盗賊
 長坂万次郎…盗賊
 さむらい松五郎…盗賊
 蛸坊主の五郎…密偵

網虫のお吉
 黒沢勝之助…同心
 網虫のお吉…盗賊
 逆でこの仙次郎

白根の万左衛門
 馬蕗の利平治…密偵
 白根の万左衛門…盗賊
 おせき…娘
 沼田の鶴吉…盗賊
 雨彦の長兵衛…盗賊

火つけ船頭
 常吉…船頭
 おとき…常吉の妻
 西村虎次郎…盗賊
 友五郎…船頭・密偵

見張りの糸
 稲荷の金太郎…盗賊
 和泉屋忠兵衛
 源四郎…和泉屋の息子
 太助…奉公人
 浦部彦太郎…京都町奉行所の与力
 相模の彦十

霜夜
 池田又四郎
 常念寺の久兵衛…盗賊
 栗原の重吉…盗賊
 お吉

池波正太郎の火付盗賊改もの