覚書/感想/コメント
北条早雲に始まる北条家が、豊臣秀吉によって滅ぼされる小田原攻めを舞台にしています。
この北条家を豊臣秀吉が征伐する要因になったのが、北条家による真田昌幸の領する名胡桃城攻撃でした。
この部分に関しては池波正太郎の「真田太平記」に詳しいので、併せて読まれると一層面白いです。
本書は、ある決断をした男が、その人生の死に様をどのように辿るのかに焦点かあてられている感じがします。
それは、本書のラストシーンの壮絶さからも感じられます。
さて、一連のシリーズの中で唯一豊臣秀吉の時代を描いているのが本書です。
そのため、時代的な観点から「忍びの風」と「忍者丹波大介」の間に位置する事になります。
前後の作品との人物関係には関連性がないですが、本書に登場する甲賀忍びは、一連のシリーズでは良く登場する人物です。
お蝶や丹波大介は登場しませんが、本書を一連のシリーズの外伝的に読まれると面白いと思います。
本書に関係する短編
→「寝返り寅松」(「忍者群像」に収録)
忍者もの
明確なシリーズではありません。
設定や主人公を読み替えることで、シリーズのように楽しめる作品群です。
おすすめの順番は次の通り。
内容/あらすじ/ネタバレ
武田信玄が徳川家康を蹴散らした三方ヶ原の戦いで、甲賀忍びの上田源五郎の父は、敵の忍びと戦って死んだ。
それから十七年、上田源五郎は北条氏邦の家臣・山岸十兵衛の家来として使えていた。
甲賀忍びである上田源五郎は、甲賀の命により、北条家の内情を探り出すために潜入していたのである。
その一方、忍びであることから離れ、一人の男として上田源五郎は山岸十兵衛の娘と結婚することになった。
山岸十兵衛が使える北条家は、豊臣秀吉に屈服しない唯一の大名となっていた。
成り上がりものに頭を下げてなるものかという意地であり、時代の趨勢を見誤った判断であった。
その判断の誤りは、致命的な過ちを犯すことになり、豊臣秀吉の逆鱗に触れる。
そして、豊臣秀吉は北条征伐の大号令をかけた。
上田源五郎は、この戦が終われば、甲賀の地に戻ることになっている。
北条家が負けるのが確定している今度の戦で、上田源五郎は、情の移った山岸十兵衛や妻正子に対する態度をどうするのか。
そして、上田源五郎が下した決断とは。
本書について
目次
三方ヶ原
十七年後
その夜
戦雲
軍議
謀略
変転
甲賀指令
進軍
出撃
相模野
落城
再十七年後
声
星霜
大坂の陣
春の海
登場人物
上田源五郎(虎松)
正子…山岸十兵衛直勝の娘
山岸十兵衛直勝
勝千代…山岸十兵衛直勝の息子
於丹…山岸十兵衛直勝の妻
板垣甚十郎
北条氏政…北条家四代目
北条氏邦…山岸十兵衛直勝の主
北条氏直…北条家五代目
松田尾張守憲秀
豊臣秀吉…関白
山中大和守俊房…甲賀頭領
夜張りの助七…源五郎の育ての親・忍び
飯道弥平次…忍び
お万喜…忍び
下中の清松…忍び
心山和尚…法城院住職