覚書/感想/コメント
池波正太郎の通い書生をしていた佐藤隆介が文を担当し、料理をそれぞれ和食を「てんぷら近藤」の近藤文夫、洋食を「たいめいけん」の茂出木雅章が担当し、池波正太郎の食卓を再現するという企画もの。それぞれの料理を一年間のサイクルに会わせて紹介している。
ほぼ全部がカラーで、料理には簡単なレシピが紹介されている。
【ピックアップ】
和食編
「卯月」
池波正太郎が気に入っていた天ぷら屋は、室町の「はやし」だったそうである。ここの店は油の匂いがせず、腹一杯食べても4、5時間後には腹が空いてくるという具合だったらしい。
天ぷらはもともと大道屋台の食べ物だった。現物が江東区の「深川江戸資料館」にあるらしいので、一度見に行ってみては如何だろうか。
また、天ぷら職人の腕はかき揚げにあらわれるようだ。裏を刺しているのはいけないらしい。
「水無月」
池波正太郎の朝食(池波流にいうと第一食)が抜き出されているが、読むだけでお腹がいっぱいになりそう…
「葉月」
鰻の蒲焼き。関東と関西では開き方が違う。関東は背開きで、関西は腹開き。武家社会と町人社会の違いらしい。つまり、切腹を嫌った関東は背開きというわけ。
この蒲焼きの語源が紹介されている。なかなか面白い。
「神無月」
落語の”目黒の秋刀魚”が史実に基づくものであったらしい。それも、この殿さまが三代将軍の家光だという。本当かしら。
「弥生」
馬鹿貝。どうやら、「場替え貝」が訛ったものらしい。潮の干満などに敏感で、一夜にして棲む場所をかえる性質からそういわれたらしい。
洋食編
「卯月」
池波正太郎のホットケーキにはカリカリに焼いたベーコンが付いてくるらしい。が、ベーコンの塩味とホットケーキは意外と合うんじゃないかという気がする。バターの塩気とも合うだろうし。
「葉月」
ジャガイモ。もともと南米原産の食物で、日本には慶長年間にやってきた。オランダ人によりジャガタラ(インドネシアのジャカルタ)から持ち込まれたので、ジャガタライモとなり、略してジャガイモとなったらしい。へぇ。
「霜月」
池波正太郎は煉瓦亭が好きだったようだ。一度行ってみようかしらん。
「師走」
師走の語源。四時の果つる月「四極月(しはつづき)」が転じたもの、「為果つ月(しはつづき)」が転じたものという説があるらしい。僧(師)が急いで小走りに町を行くようになるからというのは俗説。
さて、フランス料理には七百種類におよぶソースがあるらしい。だが、基本となるのは九種類で、その中でも特に重要なものは五種類だそうだ。うん?つまりは五種類とその亜種ということか。
「弥生」
ハンバーグがドイツのハンブルグから来ているのは有名な話し。
本書について
池波正太郎の食卓
佐藤隆介
近藤文夫
茂出木雅章
書かれた時期:-
2001年4月刊行
新潮文庫 約二五〇頁
目次
和食編
卯月
皐月
水無月
文月
葉月
長月
神無月
霜月
師走
正月
如月
弥生
洋食編
卯月
皐月
水無月
文月
葉月
長月
神無月
霜月
師走
睦月
如月
弥生