記事内に広告が含まれています。

井上靖の「風林火山」を読んだ感想とあらすじ(映画の原作)

この記事は約3分で読めます。
スポンサーリンク

覚書/感想/コメント

武田家の武将かつ軍師の山本勘助が主人公です。

そもそも山本勘助が実在の人物かどうか異論のあるところではありますが…。

物語は、山本勘助が武田家に仕え、勘助が死んだ武田信玄(武田晴信)と上杉謙信(長尾景虎)との幾度と行われた戦の中で最大の川中島の決戦までを描いています。

物語では武田晴信以上に重要な人物として由布姫が描かれています。

由布姫は諏訪頼茂の娘であり、武田四郎勝頼の母となる人物です。

山本勘助は主君・武田晴信同様に、この由布姫に自分の人生を捧げる決意をします。

この山本勘助の由布姫に対する忠誠心というのは並々ならないものがあります。

ですから、由布姫が死んだ時の山本勘助の動揺の仕方、そして、それ以後の山本勘助の心理の微妙な変化を読み捉えると面白く読めるはずです。

小説の紹介

山本勘助 を主人公にした小説です。

  1. 南原幹雄「謀将-山本勘助」

内容/あらすじ/ネタバレ

山本勘助は今川家の居候になって九年が経つ。その声望とは裏原に仕官に至っていない。

その山本勘助は一計を案じ、甲斐の武田家家臣・板垣信方の知遇を得る。そして、武田家への仕官が決まった。山本勘助の願いは一つ。自分の持つ軍略の知識を最大限に生かしたいということである。まだ、彼には戦の経験がない。

山本勘助が武田家に仕官して、主君・武田晴信は諏訪の豪族諏訪頼茂を撃つための大軍を率いて出陣した。だが、この戦は交渉によって武田家有利の状態で終了した。交渉の使者にあたったのは山本勘助であった。

諏訪氏との平和の期間は短かった。結局、諏訪頼茂を斬り、武田晴信は諏訪平定に動く。この折りに、諏訪頼茂の娘と山本勘助が出会う。この姫は由布姫という。山本勘助は、この由布姫と武田晴信の間に男子が産まれないかと考える。そうすれば、不安定な諏訪の支配が上手くゆく。

山本勘助の説得により、由布姫は武田晴信の側室になる。

諏訪平定後の武田晴信の次の敵は村上義清である。村上義清との戦いは壮絶を極めた。だが、何とか勝利を収めることが出来、村上義清の勢力を一掃することが出来た。

この間に由布姫は子を産んだ。武田四郎勝頼である。

村上義清は越後の長尾景虎に助けを求めた。長尾景虎は、この求めに応じて武田晴信と対峙する。宿敵との戦いが始まる。

本書について

井上靖
風林火山
新潮文庫 約二七五頁
戦国時代

目次

風林火山

登場人物

山本勘助
武田晴信
板垣信方
高坂昌信
三條氏…武田晴信の正妻
由布姫…諏訪頼茂の娘
於琴姫…油川刑部守の娘

映画の原作になった小説

藤沢周平「竹光始末」の感想とあらすじは?
短編6作。武家ものと市井ものが織混ざった作品集である。「竹光始末」「恐妻の剣」「乱心」「遠方より来る」が武家もの、「石を抱く」「冬の終りに」が市井ものとなる。また、「竹光始末」「遠方より来る」が海坂藩を舞台にしている。
藤沢周平「たそがれ清兵衛」の感想とあらすじは?
短編八作。全てが、剣士としては一流なのだが、一癖も二癖もある人物が主人公となっている。2002年の映画「たそがれ清兵衛」(第76回アカデミー賞外国語作品賞ノミネート。)の原作のひとつ。
海音寺潮五郎「天と地と」の感想とあらすじは?
本書は上杉謙信の側から見事に描ききった小説であると思う。本書では、上杉謙信が亡くなるまでを描いているのではない。しかし、重要な局面で印象的に小説は終了している。
藤沢周平「時雨のあと」の感想とあらすじは?
「闇の顔」の犯人は一体誰なのか。最後までわからず、そして、その犯人が意外な人物であることに思わず唸ってしまう作品。「鱗雲」では、二人の女性の対照的な結末が印象的な作品である。
藤沢周平「雪明かり」の感想とあらすじは?
直木賞受賞前後の短編集。大雑把には前半が市井もので、後半が武家ものだが、中間のものは市井もの武家もの半々である。藤沢周平としては前期の作品群になる。
池波正太郎「鬼平犯科帳第22巻 特別長編 迷路」の感想とあらすじは?

個人的に、鬼平シリーズの中で、本書が最も長谷川平蔵が格好良く書かれている作品だと思う。特に最後の場面は、思わず"目頭が熱く"なってしまった。

池波正太郎「鬼平犯科帳 第8巻」の感想とあらすじは?

今ひとつピリッとした感じがない。平蔵ら火付盗賊改方の派手な大立ち回りや、なじみの密偵達の華々しい活躍が乏しく感じられるためだろう。唯一「流星」がスケールを感じる短編である。

浅田次郎「壬生義士伝」の感想とあらすじは?(映画の原作です)(面白い!)

第十三回柴田錬三郎賞受賞作品。新選組というものにはあまり興味がなかった。倒幕派か佐幕派かといったら、倒幕派の志士の話の方が好きであった。だが、本書で少し新選組が好きになった。興味が湧いた。

池波正太郎「雲霧仁左衛門」の感想とあらすじは?
池波正太郎の火付盗賊改方というと「鬼平犯科帳」があまりにも有名すぎますので、本書は霞んでしまう面がありますが、「鬼平犯科帳」とは異なり、長編の面白さを十分に堪能できる時代小説であり、短編の「鬼平犯科帳」とは違う魅力にあふれた作品です。
司馬遼太郎の「梟の城」を読んだ感想とあらすじ(映画の原作)
司馬遼太郎氏が第42回直木三十五賞を受賞した作品です。舞台となるのは、秀吉の晩年。伊賀忍者の葛籠重蔵、風間五平、木さる。そして謎の女・小萩。それぞれの思惑が入り乱れる忍びを主人公とした小説です。
藤沢周平「隠し剣孤影抄」の感想とあらすじは?
それぞれの秘剣に特徴があるのが本書の魅力であろう。独創的な秘剣がそれぞれに冴えわたる。それがどのようなものなのかは、本書を是非読まれたい。特に印象的なのは、二編目の「臆病剣松風」と「宿命剣鬼走り」である。
和田竜「のぼうの城」の感想とあらすじは?

脚本「忍ぶの城」を小説化したのが「のぼうの城」である。舞台は秀吉の北条氏討伐で唯一落ちなかった忍城(おしじょう)の攻城戦。この忍城の攻防戦自体がかなり面白い。十倍を超える敵を相手に一月以上も籠城を重ね、ついに落ちなかった。

藤沢周平「時雨みち」の感想とあらすじは?
「帰還せず」と「滴る汗」は藤沢周平には珍しい公儀隠密もの。印象に残る作品は「山桜」と「亭主の仲間」。「山桜」が2008年に映画化されました。
酒見賢一の「墨攻」を読んだ感想とあらすじ(映画の原作)(面白い!)
物語の始まりは墨子と公輸盤との論戦から始まる。この論戦で語られることが、物語の最後で効いてくる重要な伏線となっている。さて、墨子は謎に包まれている思想家である。そして、その集団も謎に包まれたままである。
浅田次郎の「憑神」を読んだ感想とあらすじ(映画の原作)
幕末も幕末。大政奉還が行われた前後を舞台にしている。主人公別所彦四郎の昔らからの知り合いとして榎本釜次郎が登場する。この榎本釜次郎とは榎本武揚のことである。
藤沢周平「隠し剣秋風抄」の感想とあらすじは?
隠し剣シリーズの第二弾。全九編の短編集。前回同様、今回も独創的な秘剣が炸裂する。さて、印象に残る短編は、「暗黒剣千鳥」「盲目剣谺返し」の二編。「盲目剣谺返し」は2006年公開の「武士の一分」の原作である。
池波正太郎「鬼平犯科帳 第2巻」の感想とあらすじは?

本書、第二話「谷中・いろは茶屋」で同心の中でも憎めない登場人物の木村忠吾が初登場する。本書では二話で主要な役割を果たす。また、小房の粂八と相模の彦十は密偵として板に付き始めてきているようである。

夢枕獏「陰陽師」第1巻」の感想とあらすじは?
ドロドロしたオカルトチックな印象はないが、不可思議な世界感の作品である。それに、闇が舞台になっていることが多いわりには、ホラーっぽくない。静かで優雅な感じすらする。
浅田次郎「輪違屋糸里」の感想とあらすじは?
新撰組もの。舞台は江戸時代末期。「壬生義士伝」が男の目線から見た新撰組なら、この「輪違屋糸里」は女の目線から見た新撰組です。しかも、時期が限定されています。まだ壬生浪士組と呼ばれていた時期から、芹沢鴨が暗殺されるまでの時期が舞台となっている...
井上靖「おろしや国酔夢譚」の感想とあらすじは?(映画の原作です)
覚書/感想/コメント「序章」で大黒屋光太夫ら伊勢漂民以外のロシアに漂着した漂民を簡単に書いています。それらの漂民は日本に帰ることはかないませんでした。ですが、この小説の主人公大黒屋光太夫は日本に帰ることを得たのです。帰ることを得たのですが、...