覚書/感想/コメント
西安を出発して以来、役人が公然と賄賂を受け取る様を見てきた宮本輝さん。中国の役人に対する嫌悪感を募らせていくことになります。
同じように、宮本輝さんは天水以後、町の夜を散策しなくなったと書いています。
それは、人心のすさみ、荒廃。治安を守る立場のものが発する悪意や汚濁の蔓延。これらが取り巻いているような気がし、強い警戒心をもたらしたのです。
こうした思いは、宮本輝さんのみならず、同行している人間も同じでした。宮本輝さんが旅をした時期と、今とではどれくらい変わっているのでしょうか?…
さて、第1巻と第2巻では井上靖さんの「孔子」が度々引用されています。本旅行書を読み終えた後、読んでみると違った感想が得られるかもしれません。
内容/あらすじ/ネタバレ
第5章 風の底
武威を出発して、砂漠へと出た。ゴビの砂漠は果てしなく続き、貧しい農地を時折見かけ、遠くでは竜巻が生まれている。
そのゴビの砂漠の中を走り、張掖市の郊外に入った。張掖の町は武威と酒泉の中間にあり、2千年の歴史を持つ町でもある。
一行は張掖を出発して、酒泉に着いた。明日は嘉峪関に行く。万里の長城は東は渤海湾の山海関に始まり、嘉峪関でゴビの中に消える。その長さは6千キロに及ぶ。
翌朝、出発すると「風の底」といわれる場所に入ると言われた。「風の底」に着く前に、嘉峪関に着いた。そこを出発して、「風の底」に着いた。風の流れによって遠方から様々なものが運ばれてくる場所である。
第6章 星星峡への憧れ
一行は敦煌を目指す。敦煌は今までの武威や張掖、酒泉といった町とは趣を異にしていた。シルクロードといえば敦煌。だが、宮本輝はそんな甘い幻想のような思いは捨て去っていた。
敦煌では、この旅をバックアップしている北日本新聞社の上野社長と合流した。上野社長はシルクロードの旅のツアーの団長をしているのだ。
快適そうな上野社長の一行と、宮本輝一行の落差…。その宮本輝一行は敦煌で莫高窟を見学した。
一行は敦煌を出発した。敦煌の北に星星峡という町がある。名前に惹かれて、様々に空想していた場所である。
第7章 天道、是か非か
6月6日、敦煌から柳園へと向かう。そして、星星峡へ。そこは建物が7、8軒しかない集落とも呼べない場所だった。これが、何年にもわたり宮本輝自身が憧れてきた場所なのか。
星星峡を出発すると、遠くに天山山脈が見えてきた。やがて、ハミに着いた。ハミで宮本輝はイスラム教徒の食事をとった。
ハミを過ぎ、トルファンへ向かうものは火焔山を通らなければならない。火焔山の暑さは伝説化しており、西遊記にも登場する。長さ100キロ、幅10キロ。山肌には炎と同じ形の模様が浮き出ていた。炎に包まれた山だった。
本書について
宮本輝
ひとたびはポプラに臥す2
講談社文庫 約220頁
旅の時期:1995年
旅している地域 : 中国の武威~トルファン
目次
第5章 風の底
第6章 星星峡への憧れ
第7章 天道、是か非か
ひとたびはポプラに臥す