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宮本輝の「ひとたびはポプラに臥す 第6巻」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

前書から、パキスタンに入りました。パキスタンの景色はそれまでの中国側とは著しく異なっているようです。むしろ景観的にはパキスタンの方が素晴らしかったようなのです。

本書で暗澹たる気分になるのは、パキスタンには長期滞在する日本人が多いという現地ガイドの話です。マリファナなどの麻薬が入手しやすいのも一つの理由となっているようです。

特に女性の長期滞在が多いと言っています。それは旅の費用をその気になればどこでも作れるからであるそうです。つまり体を売るのです。…こんな話は確か沢木耕太郎さんの「深夜特急」にも書かれていたような気がします。旅している時期は全然違うのに、状況はあまり変わっていないようです。

さて、本書で、宮本輝が「鳩摩羅什が歩いた道を自分も歩いてみたかった」という旅は終了します。

読み終えて思うのは、この旅行記で宮本輝は鳩摩羅什に思いをはせている箇所が本当に少ないなぁ、ということです。

縁の地を辿っているにもかかわらず、宮本輝さんが考えたり、感じたりする時に引合いに出すのは鳩摩羅什とは関係のない小説や詩であったりります。

この場所で、鳩摩羅什は何を思っていたのだろうか、どういう景色を見てきたのだろうかというような感想はほとんどありません。

逆に、目立つのは同行している人間の体の不調であったり、その原因となる食べ物の衛生についての不満であったりするのが面白いのですが…。

でも、宮本輝さんの半生を自分の口で語る場面も多いので、宮本輝という作家を深く知りたいのであれば、この旅行記は面白いかもしれません。

個人的には、大量に掲載されているカラー写真がとても良かった作品でした。

内容/あらすじ/ネタバレ

第17章 星と花園

フンザの中心地・カリマバードに到着。フンザは世界最後の桃源郷と呼ばれる地域で、美しい地域である。フンザの標高は2500メートル。

フンザ河の北岸に中心の村々がある。だから日当たりがとても良い。フンザの景色は一行に笑顔をもたらした。世界にこんな場所があるとは…

宮本輝は西安以来どれほど多くのことを考え、感じてきたかを思い起こす。それは一瞬の花火のようであり、系統だったものではなかったが、ほとんど休むことなくしてきた行為であった。

フンザ王国の城でもあり要塞でもあったバルチット古城を見学。そして、フンザ最後の日はホーパル氷河の観光をした。ホーパル氷河の周辺はエメラルドが採れる地域でもあった。

第18章 インダスという名の銀河

6月22日、フンザを出発してギルギットへ向かう。パキスタン北部の首都であり、雪解け水などにより潤うオアシス都市である。

ギルギットではカルガの磨崖仏を見物した。6世紀頃に作られたもので、とすると、鳩摩羅什は見ていないことになる。言い伝えによると、この土地の下に本当のギルギットが埋まっているという。真偽のほどは定かでない。

翌朝、チラスへ出発した。ギルギットを出るとインダス河が現れた。そして、チラスに到着。チラスの暑さは表現のしようが無いほどであった。

夜、空に輝く星は、夜空全体が星であるがごとくであった。一行はしばし、夜空を眺めて過ごす。チラスは昔、ソマ・ナガルと呼ばれていた。それは月の村という意味だそうだ。

最終章 火を踏みしめる少年

チラスを出て、シャングラ峠を越え、サイドシャリフを目指す。シャングラ峠を越えると、瀟洒な別荘風の家々が建ち並び始める。避暑用に都会の金持ち達が別荘を建てているのだ。

クンジュラーブ峠を越えて以来のパキスタン北部の景色は美しかった。

サイドシャリフに到着。だが、旅の最後にきて、それまで一行の中で一番元気だった宮本輝の体が不調を訴えてきた。疲労が一度に襲ってきたのである。

サイドシャリフではスワート博物館に行き、ガンダーラ文化の一端を見た。そして、ブトカラ遺跡を見学した。その後、サイドシャリフを出発して、ペシャワールに到着。かつてのガンダーラの都である。

そして、イスラマバードへ向かい、この旅は終了する。

本書について

宮本輝
ひとたびはポプラに臥す6
講談社文庫 約245頁
旅の時期:1995年
旅している地域: : パキスタンのフンザ~イスラマバード

目次

第17章 星と花園
第18章 インダスという名の銀河
最終章 火を踏みしめる少年

ひとたびはポプラに臥す

宮本輝の「ひとたびはポプラに臥す 第1巻」を読んだ感想とあらすじ
本書の魅力は豊富な写真が散りばめられている点にあるでしょう。写真を見ながら、実際に自分も宮本輝さんと一緒に旅をしている気分を味わうことが出来ます。日本を出発したのは1995年5月25日で、帰国したのは7月1日です。
宮本輝の「ひとたびはポプラに臥す 第2巻」を読んだ感想とあらすじ
西安を出発して以来、役人が公然と賄賂を受け取る様を見てきた宮本輝さん。中国の役人に対する嫌悪感を募らせていくことになります。同じように、宮本輝さんは天水以後、町の夜を散策しなくなったと書いています。
宮本輝の「ひとたびはポプラに臥す 第3巻」を読んだ感想とあらすじ
トルファンに着いて感じたのは、ウイグル人達のとげとげしい疲弊した感じです。ここから先は7割のウイグル人を3割の漢民族が支配している地域になります。。宮本輝さんが旅した時期と現在とで、どのくらい変化があるのでしょうか。
宮本輝の「ひとたびはポプラに臥す 第4巻」を読んだ感想とあらすじ
「河を渡って木立の中へ」という第11章の題は、アメリカ南北戦争の南軍司令官ロバート・リー将軍が戦闘のたびにつぶやいた言葉です。この言葉に対する解釈は、本書に書かれています。なかなか含蓄のある言葉です。
宮本輝の「ひとたびはポプラに臥す 第5巻」を読んだ感想とあらすじ
宮本輝さんの歴史小説観が書かれている箇所が興味深いです。実在した人物を小説化することへの抵抗が根強く横たわっているというのです。実際にあったこともない人間に、まるでその人が語ったかのように描かれる歴史小説は、欺瞞、いんちき、もしくは詐欺なのではないかという思いを払拭でないそうです。
宮本輝の「ひとたびはポプラに臥す 第6巻」を読んだ感想とあらすじ
前書から、パキスタンに入りました。パキスタンの景色はそれまでの中国側とは著しく異なっているようです。むしろ景観的にはパキスタンの方が素晴らしかったようなのです。個人的には、大量に掲載されているカラー写真がとても良かった作品でした。