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佐伯泰英の「古着屋総兵衛影始末 第1巻 死闘!」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

初代総兵衛が徳川家康から直々に拝領した三池典太光世を、六代目総兵衛が先祖伝来の祖伝無想流に工夫を加えた秘剣、落花流水剣で斬る!

シリーズの最初から全速力のスピードです。

これは、波乱含みで展開が早いのがひとつ。鳶沢一族の全員が総力戦で縦横無尽に駆けめぐるため、視点がコロコロ変わるのが、もうひとつの要素です。

また、ある程度の時点で、総兵衛を筆頭とする鳶沢一族と敵対する人物が浮かび上がってきます。

もっとも、このシリーズが徳川綱吉の時代を舞台にしている時点で、誰がメインの敵役になるのかは予想がつくのですが…。

舞台となるのが元禄年間で、シリーズの最初に播磨赤穂藩の藩主浅野内匠頭長矩が高家筆頭吉良上野介義央を斬りつけるという事件が記されています。

当然、このシリーズで赤穂浪士の討ち入りが絡んでくるのは予想されます。

主人公は古着問屋六代目の大黒屋総兵衛。古着問屋は表の顔で、真の姿は徳川家の危難にそなえる隠れ旗本。つまり、影の軍勢です。

ですが、これを知るのは代々「影」と呼ばれる人物と、総兵衛ら鳶沢一族のみです。

この鳶沢一族ですが、西国浪人鳶沢成元を初代としています。この初代以後鳶沢一族の影の任務は十五度におよんでいます。

江戸には一族の当主が常駐し、分家が駿府の鳶沢村に居を構えています。江戸の大黒屋で働く者の中には一族の者がおり、この者達は鳶沢村での厳しい修行を経てやってきます。

さて、総兵衛が遣う三池典太光世。天下五剣と書かれていますが、本当の天下五剣は大典太光世と呼ばれ、足利将軍から豊臣秀吉、徳川将軍家(徳川秀忠)から加賀の前田家(前田利常)に伝わっています。大典太光世は平安時代に作られた太刀で、重厚な印象を与える外観をもっているそうです。

ちなみに、大典太光世は病を静める宝剣として霊験の高いことでも名高いそうです。前田家の重宝となったのも、この霊験がきっかけだといいます。

徳川家康が死の床まで放さなかった遺愛刀も三池光世の作品です。恐らく、このシリーズで言う三池典太光世とはこのことをいっているのでしょう。

最後に一つ徳間書店に対してクレームです。

このシリーズの表紙を全面的に見直した方がいいです。佐伯泰英氏の諸作品のなかでこのシリーズの表紙が最も酷いです。この表紙を見て購買意欲が湧くとは思えません。

新装するには期間が短すぎるかも知れませんが、佐伯泰英氏はすべての点において異例尽くめの作家ですから、表紙を全面的に見直しても悪くないだろうと思います。

-追加-

嬉しいことに2008年になってから順次新装版に切り替えています。表紙を全面的に見直して、徳間書店もやる気を出してくれたようです。

内容/あらすじ/ネタバレ

元和二年(一六一六)二月。大御所徳川家康は死の床にあった。

病間からすべての者が遠ざけられ、一人、日本橋鳶沢町に古着問屋を商う大黒屋総兵衛だけが呼ばれた。そして言い渡されたのは、大黒屋の当主は古着商い、鳶沢町の惣代として生き、商人の顔を被り通しながら、これまで通りに徳川存亡の時に江戸にはせ参じる隠れ旗本、つまり江戸備えの影の軍勢として生きよということであった…。

家康の死から八十五年後。江戸郊外の尼寺で奇妙な取り合わせの集まりがあった。

元禄十四年(一七〇一)、三月十四日。江戸城中松之廊下で播磨赤穂藩の藩主浅野内匠頭長矩が高家筆頭吉良上野介義央を斬りつけるという事件が起きた。

旧名鳶沢町の富沢町は古着屋が集まっている場所である。ここの唯一の古着問屋大黒屋の大番頭笠蔵が小僧の駒吉を連れて町内の見回りに歩いている時のこと。女の死体が発見された。女は大黒屋の担ぎ商いのそめであった。

笠蔵は店に戻り、六代目大黒屋総兵衛に事のあらましを告げ、そめが殺されたのは鳶沢一族の影の指名に気づいた何者かがわざわざ分かるようにしたのかと危惧していることを吐露した。

これに続き、大黒屋に縁のある駿府屋繁三郎も殺されて死体で見つかった。

これで狙いが大黒屋にあることがはっきりした。

京での古着の仕入れを終え、戻ってきた国次が、仕入れ先の丹波屋から次の取引から今までのように品揃えが出来るかどうか保証できないといわれたという。お上からの圧力があったようだ。

さらに、途中鳶沢村に寄った国次がいうには、最近江戸からの便りがなくなっているという。そんなはずはない。

一体何がおきようとしているのか。

総兵衛は大目付本庄豊後守に会うことにした。

「やはち」の崩し文字。初代の影、本多正純の幼名から取ったつなぎ文だ。

影からの呼び出しを受けた総兵衛は影に会いに行った。影は姿を現わさず声のみで要件を告げる。

影はいう。我々の特命を知るものが動き始めた。そして、近いうちに町奉行所から古着屋惣代が江川屋彦左衛門に移ることが申し渡されると。その動きをすみやかに潰せ。これが影からの命であった。

江川屋彦左衛門の行動を見張っていると、番頭の儀平が数人を連れて旅立っていった。その後を信之助らがつける。そして、箱根で儀平らが炭焼きの老夫婦ともめた。ここで儀平は老夫婦と、一緒に連れてきた手代の清吉を斬った…。

一方で、船宿幾とせの千鶴がさらわれた。さらったのは、どうやら因縁のある閻魔の伴太夫一家のようだ。この閻魔の伴太夫一家も江川屋彦左衛門に関連して動いているようだ。

やがて段々と事の背景がわかってきた。それは、古着問屋が取り扱う莫大な金の流れを牛耳り、さらには大黒屋の影の仕事を快く思っていない人物による画策であった。

江川屋彦左衛門の後ろにいるのは、御前と呼ばれ、五代将軍徳川綱吉の信頼の厚い御側御用人で老中上座の柳沢保明だった。
いよいよ、鳶沢一族と柳沢保明の手下との戦いの火蓋が切っておろされる…。

本書について

佐伯泰英
死闘! 古着屋総兵衛影始末
徳間文庫 約四〇五頁
江戸時代

目次

序章
第一章 危機
第二章 探索
第三章 奪還
第四章 誘拐
第五章 潜入
第六章 死闘

登場人物

遠野鉄五郎…北町奉行所定廻り同心
半鐘下の鶴吉…目明かし
遠野(奥村)皓之丞
秀松…博多屋の跡取り
江川屋彦左衛門
儀平…番頭
添田刃九郎…剣客
閻魔の伴太夫…香具師
猿の音七
野嵐龍五郎
諸葉一伝斎…剣客
竹松…木更津港の顔役
隆円寺真悟
新城十兵衛
堀内伝蔵…鹿島新当流
(船宿幾とせ)
うめ…女将
千鶴
勝五郎…老船頭

古着屋総兵衛影始末シリーズ

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前作で「影」が下した指令は、播磨赤穂藩の藩主浅野内匠頭長矩が高家筆頭吉良上野介義央を斬りつけるという事件に端を発していました。総兵衛は「影」の意に反して動きます。「影」の指令が徳川家の安泰のためには逆に動くものと思ったからです。しかし、そのことによって「影」との対立が表面化しようとしていました。
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物語は花見をしている時に起きた事件から始まります。江戸の花見は、五代将軍徳川綱吉治世下での名所は不忍池を見下ろす上野の山。江戸時代の花見としては、他に飛鳥山、隅田川堤、品川御殿山、小金井などがありますが、これらは八代将軍徳川吉宗の時代を待たなくてはなりません。
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