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佐伯泰英の「居眠り磐音江戸双紙 第11巻 無月ノ橋」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第十一弾。

本書で、南町奉行所の切れ者・笹塚孫一が死の淵を彷徨うほどの重体に陥る。磐音とは奇妙な関係が続いているのだが、長いこと関わっている内に、双方に厚い信頼関係が出来上がっている。

だから、磐音は笹塚孫一のために、若狭小浜藩の家臣で蘭医の中川淳庵と奥医師の桂川国瑞という通常では考えられない医師に面倒を頼んだ。磐音の頼みに応える中川淳庵と桂川国瑞の友情も見事である。

さて、御側衆の速水左近を通じて、磐音の活躍は上様こと徳川家治の耳にも届いている。その褒美に速水左近から脇差粟田口吉光をもらった。そのことに、おこんは鼻高々であるが、磐音は至って冷静で困惑している。

このおこんが逆にやきもきするのは、印場鳥取藩の織田桜子の存在である。桜子が磐音に急接近する様を見て、焼餅を焼く辺りは可愛らしいものだ。今後どうなるのかは本書に伏線が張られているようだが、桜子がどう出るかは一つの楽しみといえるだろう。

最後に、品川柳次郎の出生の秘密が分かる。もともと上に兄が二人いたが、長男が水死したため、すぐ上の兄が長男として、そして柳次郎が二男として届けられたのだ。

内容/あらすじ/ネタバレ

安永四年(一七七五)の秋。坂崎磐音は品川柳次郎の母・幾代の誘いを受けた。

その前に、備前包平の研ぎが終ったので受け取りに行くことにした。すると、鵜飼百助が一人の武家と睨み合っていた。百助が研がないと言ったことに腹を立てているようだ。

高村栄五郎という御普請支配の大身旗本の用人のようだ。持ち込んだ刀は勢州村正を改鑿したもののようだ。村正は徳川家に仇をなすとして忌み嫌われる刀だ。それを旗本が所持していることになる。

その帰り、磐音は家の戸口に手紙が差し込まれているのに気がついた。手紙の主は因幡鳥取藩の重臣・織田宇多右衛門の娘・桜子だった。おこんは女難の相がでていると決めつけ、やきもきしている相手だ。

磐音は幾代の招待を受け、柳次郎とともに品川家の菩提寺・竜眼寺に向かった。竜眼寺は別名萩の寺といって有名である。これを愛でるために誘ってくれたのだ。

さて、鵜飼百助のところで悶着のあった高村栄五郎が放ったと思われる刺客が磐根を襲う。もしかしたら、鵜飼百助のもとにもあらわれるかもしれない。この件に関して笹塚孫一が動き出した。

久々に佐々木道場に顔を出すと師の玲圓が相手をせよという。その後、御側衆の速水左近とも稽古をする。

地蔵の竹蔵が飛び込んできた。笹塚孫一が辻斬りにあったという。瀕死の状態のようだ。

その枕元で、磐音は笹塚孫一が逸見筑前守実篤を訪ねたという。村正を鵜飼百助に持ち込んだ高村栄五郎の主だ。その帰りに斬られたという。斬ってきた相手は大身旗本の風体だったという。その後も笹塚孫一の容態は芳しくない。磐音は中川淳庵や桂川国瑞に助けを頼む。

相手は大身旗本だ。磐音は速水左近の屋敷を訪ねた。

来春の日光社参に各大名家は頭を悩ましているようだ。その金策に今津屋を訪ねてくる大名家も多いらしい。豊後関前藩も大丈夫だろうかと磐音は心配をしていた。豊後関前藩の再建は始まったばかりである。第一便の船がやってきて、そろそろ第二便が着くはずである。

竹村武左衛門が訪ねてきた。この春に権造一家の代貸五郎造について秩父に娘を買いに行く手伝いをやらされたが、その娘達がいるはずの一酔楼が面倒に巻き込まれているらしいという。

磐音が中川淳庵と桂川国瑞らとともに宮戸川で鰻を食べる約束をしていた日。因幡鳥取藩の重臣織田宇多右衛門の娘・桜子が駕籠で訪ねてきて、いつぞやの昼餉の誘いに来たという。

戸口に差し込まれていた手紙の件をすっかり失念していた磐音であった。桜子にこれからの用事を話すと、一緒に鰻を食べることになった。

桜子を屋敷へ送るなかで、磐音はぞくりとした殺気を感じた。その後も磐根を監視する視線を感じる。鳥取藩の内紛は収まっていなかったのか…

吉原でも何やらきな臭い話が出ている。またもや白鶴が危機にあいそうだ。

本書について

佐伯泰英
無月ノ橋
居眠り磐音 江戸双紙11
双葉文庫 約三四五頁
江戸時代

目次

第一章 法会の白萩
第二章 秋雨八丁堀
第三章 金貸し旗本
第四章 おこん恋々
第五章 鐘ヶ淵の打掛け

登場人物

鵜飼百助
逸見筑前守実篤
逸見忠篤…嫡男
高村栄五郎
小栗伝内為定
後部輝定
高崎玄斎…医師
池田勝一…南町奉行所内与力
盛次…笹塚孫一の小者
鈴木亮平…見習い同心
寅吉…臥煙
千右衛門…一酔楼主
おまさ
石塚籐右衛門…旗本
中野邦助…用人
白泉…按摩
佐竹正兵衛
信右衛門…金貸し
川村保…御家人
柏兵衛…大家
源尾孫太夫
お慧…源尾の娘
織田桜子
日野伝中
破千村小助
倉知三太夫
荒尾成煕…印場鳥取藩着座筆頭
村上新六…荒尾家用人
猪野畑平内
髭の意休(深見重左衛門)
大口屋八兵衛(金翠)
赤間覚之助
阿波屋兼太郎

シリーズ一覧

  1. 陽炎ノ辻
  2. 寒雷ノ坂
  3. 花芒ノ海
  4. 雪華ノ里
  5. 龍天ノ門
  6. 雨降ノ山
  7. 狐火ノ杜
  8. 朔風ノ岸
  9. 遠霞ノ峠
  10. 朝虹ノ島
  11. 無月ノ橋
  12. 探梅ノ家
  13. 残花ノ庭
  14. 夏燕ノ道
  15. 驟雨ノ町
  16. 螢火ノ宿
  17. 紅椿ノ谷
  18. 捨雛ノ川
  19. 梅雨ノ蝶
  20. 野分ノ灘
  21. 鯖雲ノ城
  22. 荒海ノ津
  23. 万両ノ雪
  24. 朧夜ノ桜
  25. 白桐ノ夢
  26. 紅花ノ邨
  27. 石榴ノ蠅
  28. 照葉ノ露
  29. 冬桜ノ雀
  30. 侘助ノ白
  31. 更衣ノ鷹上
  32. 更衣ノ鷹下
  33. 孤愁ノ春
  34. 尾張ノ夏
  35. 姥捨ノ郷
  36. 紀伊ノ変
  37. 一矢ノ秋
  38. 東雲ノ空
  39. 秋思ノ人
  40. 春霞ノ乱
  41. 散華ノ刻
  42. 木槿ノ賦
  43. 徒然ノ冬
  44. 湯島ノ罠
  45. 空蟬ノ念
  46. 弓張ノ月
  47. 失意ノ方
  48. 白鶴ノ紅
  49. 意次ノ妄
  50. 竹屋ノ渡
  51. 旅立ノ朝(完)
  52. 「居眠り磐音江戸双紙」読本
  53. 読み切り中編「跡継ぎ」
  54. 居眠り磐音江戸双紙帰着準備号
  55. 読みきり中編「橋の上」(『居眠り磐音江戸双紙』青春編)
  56. 吉田版「居眠り磐音」江戸地図磐音が歩いた江戸の町