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佐伯泰英の「居眠り磐音江戸双紙 第14巻 夏燕ノ道」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第十四弾。

日光社参が始まる。武家方と町方の力を合わせての日光社参だ。幕府も金蔵がつき、町方から路銀を工面してもらわないと立ちゆかない時勢である。町方が日光社参に同行して勘定を見るのは道理であるが、武家方の人間達には面白いはずはない。当然一悶着がある。

それに、今回は世子・徳川家基が秘密で同道している。家基の暗殺をねらう田沼意次一派の策動もあり、気が抜けない。

坂崎磐音はこれらの難題にどのように立ち向かうのだろうか。それが本書の見所である。

見所といえば、今回の日光社参には佐々木玲圓が陰の護衛として参加している。その真の強さが姿を現すのが本書である。是非、佐々木玲圓の活躍も楽しみにしていただきたいものである。

さて、前回娘のおこんにお見合いをはねつけられたどれたの金兵衛。今回はお見合いを三組用意して、手ぐすね引いて待っている。一波乱起きそうな予感である。

そして、本来出番がないはずの南町奉行所の与力・笹塚孫一も友情出演(?)という形で登場する。例によって磐音と掛け合い、磐音の口から「それがしは南町奉行所の役人ではございませぬ」の言葉が出る。この一言がないと、締まらなくなってきているようだ。

内容/あらすじ/ネタバレ

安永五年(一七七六)。十代将軍徳川家治は江戸城を出立して日光社参に向かうことになっている。坂崎磐音は便宜上、勘定奉行太田播磨守正房の家来として随行することになった。今回の随行には、磐音は備前長船長義と粟田口吉光を持って行くことにした。

今回の路銀調達に江戸の豪商達が一役買ったこともあり、金銭の出し入れを担当する勘定方に町方が加わることになっている。総指揮は由蔵が執り、これに番頭の新三郎らが従う格好だ。

磐音や由蔵が江戸を留守する間の今津屋の守りに、品川柳次郎をはじめとして、佐々木道場の面々が付くことになった。

日光社参の家治の御側衆の最側近として速見左近が随身方として抜擢された。その速見左近と師・佐々木玲圓が額をつきあわせて険しい顔で話し合っている。

磐音が日光社参の無事を祈願して神田明神に行ったときのこと。奈緒を探し求める長崎街道の道中で知り合った越中富山の薬売り弥助の危険を救った。

弥助の身分はおそらく幕府の隠密だろうと磐音は踏んでいる。果たして弥助は否定しなかった。これを知り、磐音は弥助にある頼み事をする。

この頃、佐々木玲圓は江戸を離れていた。

「御駕お乗り込み!」家治が出立し、日光社参が本格的に始まった。

日光社参には本来世子は供をしない習わしである。将軍の無事社参を祈願するために在府することになっている。だが、家治は世子・家基に期待をかけており、今回の日光社参に極秘で帯同させることにした。佐々木玲圓はこのために江戸を先立っているのだ。

家基は御鷹匠衆に偽装している。この家基に磐音は会い、その身辺警護をすることになった。磐音は今津屋の後見人としての働きもしつつ、家基の警護もする道中となった。

家基は鋭敏にして明晰と評判されている。それだけに将軍家の形骸化をたくらみ、田沼体制の続行を企てる田沼意次一派の策動が気になるところである。

果たして仕掛けてきた。田沼意次がよこしてきたのは雑賀衆の一派蝙蝠組である。

本書について

佐伯泰英
夏燕ノ道
居眠り磐音 江戸双紙14
双葉文庫 約三四〇頁
江戸時代

目次

第一章 卯月の風
第二章 出立前夜
第三章 若武者と隼
第四章 思川の刺客
第五章 女狐おてん

登場人物

森川安左衛門…旗本
おまき
弥助…越中富山の薬売り
徳川家治…十代将軍
徳川家基
野口三郎助…鷹匠
五木忠次郎…家基の従者
三枝隆之輔…家基の従者
太田播磨守正房…勘定奉行
伊沖参左衛門…武家実務方
秋葉市五郎
田沼意次
浮田秀伸
雑賀泰造日根八
辰見喰助…雑賀蝙蝠組
紀伊半兵衛
女狐おてん…女忍びの小頭
霧子…女忍び
実右衛門…名主
高辻宰相胤長…例幣使

シリーズ一覧

  1. 陽炎ノ辻
  2. 寒雷ノ坂
  3. 花芒ノ海
  4. 雪華ノ里
  5. 龍天ノ門
  6. 雨降ノ山
  7. 狐火ノ杜
  8. 朔風ノ岸
  9. 遠霞ノ峠
  10. 朝虹ノ島
  11. 無月ノ橋
  12. 探梅ノ家
  13. 残花ノ庭
  14. 夏燕ノ道
  15. 驟雨ノ町
  16. 螢火ノ宿
  17. 紅椿ノ谷
  18. 捨雛ノ川
  19. 梅雨ノ蝶
  20. 野分ノ灘
  21. 鯖雲ノ城
  22. 荒海ノ津
  23. 万両ノ雪
  24. 朧夜ノ桜
  25. 白桐ノ夢
  26. 紅花ノ邨
  27. 石榴ノ蠅
  28. 照葉ノ露
  29. 冬桜ノ雀
  30. 侘助ノ白
  31. 更衣ノ鷹上
  32. 更衣ノ鷹下
  33. 孤愁ノ春
  34. 尾張ノ夏
  35. 姥捨ノ郷
  36. 紀伊ノ変
  37. 一矢ノ秋
  38. 東雲ノ空
  39. 秋思ノ人
  40. 春霞ノ乱
  41. 散華ノ刻
  42. 木槿ノ賦
  43. 徒然ノ冬
  44. 湯島ノ罠
  45. 空蟬ノ念
  46. 弓張ノ月
  47. 失意ノ方
  48. 白鶴ノ紅
  49. 意次ノ妄
  50. 竹屋ノ渡
  51. 旅立ノ朝(完)
  52. 「居眠り磐音江戸双紙」読本
  53. 読み切り中編「跡継ぎ」
  54. 居眠り磐音江戸双紙帰着準備号
  55. 読みきり中編「橋の上」(『居眠り磐音江戸双紙』青春編)
  56. 吉田版「居眠り磐音」江戸地図磐音が歩いた江戸の町