覚書/感想/コメント
シリーズ第十七弾。
坂崎磐音は藩改革に絡んで藩を離脱。その藩の改革も進み始めている。そして、許嫁だった小林奈緒は新たな人生を歩み出し、磐音がなすことは茫漠としている。
一方、おこんもお佐紀の輿入れとともに奥の仕切りから解放されるが、一種の虚脱感にとらわれてしまっている。
そんな二人が初めて二人だけでの旅に出る。リフレッシュの旅である。このリフレッシュの旅は、今までのシリーズ全体をリフレッシュしてくれる意味合いもあるように思われる。そして、リフレッシュした後には新たな物語が始まることだろう。
これまで重要な配役だった何人かの人物が物語の舞台から去り、新たな人物たちが登場するのだろう。本作では、今後の坂崎磐音を待ち受ける新たな人物たちが登場したように思われる。
これから始まるであろう第二部は、どのような権力者が坂崎磐音の前に立ちはだかるのだろうか?
豊後関前藩には宍戸文六、福坂利高という悪がいた。これらの人物が磐音の前に立ちはだかった。だが、藩を飛び出してしまった磐音は、上様こと徳川家治や世子・家基にも知られている。とすると、一度登場しているが、田沼意次が巨大な権力として立ちはだかるのだろうか?
そして、どのような人物たちが新たにストーリーを彩るのだろうか。楽しみである。
だが、まず目先の大きな出来事は磐音とおこんの祝言である。これだけは間違いない。
さて、江戸の初め、婚礼は夜分に催されていたそうだ。早い輿入れで暮れ六つ、五つ(午後八時頃)、九つ(午前十二時)、八つ(午前二時頃)というのもあったようだ。これが、享保期には昼に移ったようである。
内容/あらすじ/ネタバレ
旧暦八月十三日。坂崎磐音は今津屋吉右衛門の祝言に際し、花嫁を迎えにいく役を担った。念のため、祝言で浮かれる今津屋の用心のために、磐音は品川柳次郎と竹村武左衛門に用心棒を頼むことにした。
磐音はまず仲人の速見左近夫妻を迎えに行く。そして、花嫁のお佐紀を迎えに行った。祝言はつつがなく終わることを得た。
道場での稽古を終えた磐音は中川淳庵を訪ねた。最近おこんがどことなく気鬱な表情を見せる。そのことが気になったのだ。本来内儀がこなす役をおこんは仕切ってきていたので、その役目から解放されて気持ちの拠り所を失ったというところではないかと淳庵は看た。
佐々木道場も門弟が増え手狭になった。そこで増改築をすることになった。だが、内所が苦しい。今津屋も佐々木道場の改築費用の一部を受け持ってくれた。
改築の間、道場は丹波亀山藩松平家の道場を借りることになった。
道場でも道場改築の冥加の醤油樽を置いた。だが、この冥加樽がなくなった。そして、あろうことか、この冥加樽を持ち歩き寄付を募る輩がいるらしい。
一体誰が、そして何のために?
木下一郎太や地蔵の竹蔵も犯人を追う。
御典医の桂川国瑞が今津屋を訪ねた。表向きは吉右衛門とお佐紀を看に来たことになっているが、実はおこんの様子を見に来たのだ。
この桂川国瑞はおこんをしばらく休養させた方が良いという。そして、上野と越後境の三国峠下の法師の湯を薦めた。これには今津屋吉右衛門も同調した。
そしておこんを説き伏せ、磐音は二人で法師の湯へと旅立った。だが、その道中で…
本書について
佐伯泰英
紅椿ノ谷
居眠り磐音 江戸双紙17
双葉文庫 約三五〇頁
江戸時代
目次
第一章 十三夜祝言
第二章 鰻屋の新香
第三章 冥加樽の怪
第四章 ふたり道中
第五章 法師の湯
登場人物
糸居三五郎…秋田藩佐竹家家臣
早坂貴右衛門…秋田藩佐竹家家臣
岸辺俊左衛門…信州松代藩家臣
指田精左衛門茂光…中条流道場主
池端五郎丸…師範
狛田源三郎…門弟
伊賀多助…門弟
松平佐渡守信直
日下草右衛門…丹波亀山藩松平家家臣
丹下屋笠左衛門…殺し請負
山口猫八
宮沢傳兵衛
一之木数馬
おすが
相馬泰之進
六所正兵衛
理左衛門…法師の湯主
おいね
しろ…犬