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佐伯泰英の「交代寄合伊那衆異聞 第6巻 攘夷」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第六弾。

物語が始まって1年たつ。もう1年というか、まだ1年というか。

本作では、おらん(瀬紫)の姿が消え、逆に名前だけだが江戸の面々の名が登場した。名前が出たことで、そろそろ江戸に戻る時期になったのだろうか?それとももうしばらく長崎にいることになるのだろうか?

この長崎には新たな強敵が現われた。大目付宗門御改加役人別帳御改の大久保肥後守純友。一体なぜ長崎に送り込まれてきたのか?

そして、チラホラする水戸浪士の姿。背後には水戸(徳川)斉昭の姿も…

本シリーズの敵役は水戸斉昭となるのだろうか?

さて、今回の舞台の一つとなる長崎出島だが、周囲二百八十六間二尺九寸(約500メートル)、敷地面積三千九百二十四坪一歩(約13,000平方メートル)、せいぜい大身旗本の拝領屋敷ほどの広さの人工島だそうだ。この狭い敷地に阿蘭陀人は二百余年も押し込められてきたということになる。

建設費用は長崎の豪商二十五人が捻出し、阿蘭陀人は年間八十貫の地代を払い続けていたそうだ。

江戸の吉原、京の島原とともに、日本三大遊郭(三場所)の一つとして知られてた長崎の丸山。この丸山の門前橋として思案橋が架かっていた。

「思案橋ろくな思案のでぬところ」

「いこか、いくめかしやん橋」

元々は、シャム橋と呼ばれていたそうで、無人島探検を命じられた長崎人島谷市左エ門がシャム型船を造った時の残り材で架けられたからシャム橋と言われるようになったという説、そして、文禄元年に完成した川口橋が土橋から屋根付の木造橋へかわり、屋根なしの木橋にかわるうちに思案橋と呼ばれるようになったという説があるそうだ。

それよりも、遊郭へ行こうか戻ろかと思案したので名付けられたというのが本当のような気もするのだが…。

内容/あらすじ/ネタバレ

晩秋。長崎に激震が走った。

長崎の隠れきりしたんにはいくつかある。玲奈の母が代表しているのは外海系と呼ばれる信徒衆だった。この度浦上の信徒に手入れが入ったという。隠れきりしたんの摘発、つまり三番崩れが起きたのだ。

寛政二年(一七九〇)の一番崩れ、天保十三年(一八四二)の二番崩れに続くものだった。浦上の信徒がころべば外海系にも累が及ぶ。

座光寺藤之助は三挺鉄砲を設計した時計師の御幡儀右衛門に連れられて、玲奈に会いに行った。

玲奈の呼び出しは三番崩れとは関係がなかった。萩からきた二人を守って欲しいというものだった。萩とはつまり長州藩である。二人は異国の技術を学ぶために長崎に来ていた。名乗った名前は恐らく偽名だろう。そして早くも二人の狙う者が現れた。

一方でいい知らせがあった。それは異国へ出立した能勢隈之助からの手紙が届いたのだ。

江戸より大目付宗門御改加役人別帳御改の大久保肥後守純友が着任した。小野派一刀流の名手との噂される人物で、藤之助に敵意をむき出しにしてきた。

三番崩れを引き起こした奉行所の密偵に誘われ、藤之助は隠れきりしたんの拷問の場を見せられた。そして、目の前で転ぶのを見た。摘発は外海系に及ぶのが確実となった。

だが、藤之助は見張られ、玲奈にも連絡にしようがなかった。藤之助は唐人屋敷へと向かっていった。唐人屋敷で黄武尊に会い、事後を託すことになった。それにしても、と黄武尊はいう。この度の大久保肥後守純友の着任には裏があるのではないかと…。

また、大久保は浪士団を連れてきているようだという。浪士団の長は水戸浪士の夏越六朗太だそうだ。この当時としてはまだ聞き慣れない攘夷を掲げているのだともいう。

長崎奉行所目付の光村作太郎が、この一月に続けざまに三人ほどが殺された話をした。三件とも投げ文があり、三人ともが開明派だったそうだ。

江戸町惣町乙名の椚田太郎次が訪ねてきた。明日出航予定の阿蘭陀商船ザイヘル号で本国に戻るはずの下級商務官ヨハン・コリネウスが失踪したという。

この半年、丸山の遊女おきねと懇ろになっており、別れを惜しんでいたそうだ。このおきねは落籍され遊女ではなくなっていた。あまりにも符丁をあわせたような行動だ。

藤之助は太郎次とともに出島に潜入し、コリネウスの行方を捜し始めた。

長州から異国の技術を学びに来ていた二人が殺された。そしてあろうことか、玲奈の祖父・高島了悦が攫われた…

本書について

佐伯泰英
攘夷 交代寄合伊那衆異聞6
講談社文庫 約三三〇頁
江戸時代

目次

第一章 三番崩れ
第二章 夜明け前
第三章 角力灘の海賊
第四章 出島からの失踪者
第五章 十郎原の決闘

登場人物

御幡儀右衛門…時計師
ドーニァ・マリア・薫子・デ・ソト…玲奈の母
大久保肥後守純友…大目付宗門御改加役人別帳御改
佐城の利吉…奉行所の密偵
夏越六朗太…両剣時中流
市橋聖五郎
舜民…隠れきりしたん
有膳…隠れきりしたん
大林理介(四谷太郎吉)…長州藩士
山根荒三郎(岡田平八郎)…長州藩士
五島の伍市…海賊
荒尾石見守成允…新任長崎奉行
ヨハン・コリネウス…下級商務官
おきね…遊女
ドンケル・クルチウス…商館長
(長崎伝習所)
酒井栄五郎…御側衆酒井上総守義宗の倅
一柳聖次郎…御小姓御番頭の次男
能勢隈之助
勝麟太郎
光村作太郎…長崎目付
飯干十八郎…長崎奉行所隠れきりしたん探索方