佐伯泰英の「密命 第6巻 兇刃-密命・一期一殺」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第六巻。

困ったことだが、荒神屋喜八のご託宣は必ず当たる。果たして、再び金杉惣三郎は騒動に巻き込まれる。旧藩・豊後相良藩が再び危機に見舞われたというのだ。今回の危機も、第一巻と同じく”ばてれん”絡み。そして、再びの御家騒動の模様を呈し始める。

こうした問題山積の中、めでたいことがいくつか起きる。

一つは、お杏と登五郎との間に子供が生まれた。男のである。名前はお杏の生き別れた旦那・半次郎の名を受け継いで半次郎。め組の大切な跡取りの誕生である。

この半次郎は、ある事件をきっかけに、鍾馗の昇平がお気に入りになったようである。昇平からはなすと泣き出すのだから微笑ましい。

この昇平は惣三郎に連れられて、石見道場に入門する。これ以後、昇平は惣三郎を師匠と呼び、石見銕太郎を大師匠と呼ぶようになる。

もう一つのめでたいこと。いや、めでたくなるかも知れないこと。それは、長いこと独身を通して周囲をやきもきさせている同心・西村桐十郎にも恋の話が。

これをどうにかしてまとめようと静香とお杏が乗り出し、はては大岡忠相の内用人・織田朝七も巻き込んでの珍騒動となる始末。果たして、この恋の行方はいかに?

内容/あらすじ/ネタバレ

享保六年(一七二一)の新春。鷹狩りに出た徳川吉宗一行。連座制を目の当たりにした吉宗は何か手だてがないかと大岡忠相に聞く。それを、御用取次の有馬氏倫が憤怒の思いで見ていた…。

め組にいよいよ跡取りが生まれそうである。お杏が生んだのは男の子で、冠阿弥膳兵衛が名付け親となり、名は半次郎となった。

そうしためでたい席の中で金杉惣三郎を客が訪ねてきた。豊後相良藩の江戸屋敷留守居役・庵原三右衛門である。

藩主・高玖は久胤改め五郎丸と名乗っている分家の勧めで側室を持った。側室は清香といった。

この清香の部屋から奇妙な称名念仏が聞こえて来るという。どうやら”ばてれん”の祈祷である。これを聞いて惣三郎は背筋がぞくりとした。
惣三郎は旧主君の高玖に会うことになった。

そして、高玖は城中で襖の陰から清香のことを質されたという。もはや豊後相良藩は終わりだと悲観に暮れている。どうやら分家・五郎丸に罠を仕掛けられたようだ。

だが、この罠が豊後相良藩が狙いなのか、高玖の失脚を狙ったものかが釈然としない。

惣三郎が高玖の元を辞去すると、早速に狙われた。どうやら藩内に動きを見ている輩がいるらしい。

旧藩の一件はただの御家騒動の再燃で終わるとは考えられなかった。

め組の鍾馗の昇平が剣術をならいたいと惣三郎に相談してきた。早速に石見道場に連れて行き、入門させた。

鹿島で修行を続ける清之助は春には目録が許されるようである。

荒神屋の付近で様々な不可解なことが起きる。さては、競争相手の嫌がらせかと思っていたが、やがて死者が出る事故を起こす。どうやら荒神屋を狙ったというよりは、惣三郎が関わっているところを狙っているようである。

惣三郎は豊後相良藩の小者・岩松を探索に使った。その岩松が藩主・高玖と側室・清香のいる近くに潜入したときのこと。草の者が高玖の寝所の近くに潜んでいた。

この草の者は両刃の長剣を使っていた。異国で作られたもののようであり、柄には異国の言葉が書かれている。南蛮剣法を操る連中らしい。

惣三郎は大岡越前守忠相を訪ねた。かつて分家・斎木丹波が御家騒動の元を作ったが、今回はその実子五郎丸が策動しているようだと語った。だが、御家騒動だけとは即断できない点があるとも述べた。

というのも、高玖は極秘で城中で姿を見せぬ相手から脅されているのだ。
この一件、大岡には少し思い当たることがあるようである。

本書について

佐伯泰英
兇刃 密命・一期一殺
祥伝社文庫 約三三五頁
江戸時代

目次

序章
第一章 邪恋危難
第二章 江戸騒然
第三章 純愛同心
第四章 身辺黒雲
第五章 高玖蟄居
第六章 闇夜評定

登場人物

有馬氏倫…御用取次
京極長門
筒井肥前守…大目付
鍾馗の昇平…「め組」
仁助…そば屋
野衣
<豊後相良藩>
斎木高玖…藩主
麻紀…正室
古田孫作…江戸家老
庵原三右衛門…江戸留守居役
清香…側室
波女
米谷兼吉…勘定奉行
岩松…小者
駿太郎…小者
佐吉…小者
斎木五郎丸…分家当主
飯田国春
九重馬之助
日下神次郎
古矢丹兵衛
棺桶の為三郎

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