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佐伯泰英の「密命 第8巻 悲恋-密命・尾張柳生剣」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第八巻。

大試合といわれる剣術大会が終わって一月後。誤解から金杉惣三郎は狙われることになる。相手は尾張柳生。

誤解から始まった今回の襲撃を終わらせたい惣三郎だが、大岡忠相はあきらめよと言う。なぜなら、尾張の兄弟が将軍位をあきらめない限り、尾張柳生は尾張の兄弟を助けるであろう。

そして、ゆくゆくは八代吉宗を狙うにしても、その前に大岡忠相を倒さなければならない。そして、その大岡の前に金杉惣三郎を倒さなければならないからだ。

どうやら、尾張柳生とは不倶戴天の敵となるしかないようである。

さて、修行にでた清之助。まずは、九州へと向かう。九州の地には宮本武蔵の二天一流や、タイ捨流、示現流などの流派がある。剣術が盛んな地域でもある。

この地で、剣豪の足跡をたどりながら修行を積む清之助、まだ我がものにはできていない秘剣・霜夜炎返し。これを完成させるための厳しい修行が続く。

一方、江戸の妹・みわは今回事件に巻き込まれてしまうが、お年頃である。さて、みわの恋模様もこれからの楽しみである。

恋模様といえば、同心の西村桐十郎がめでたく祝言をあげることができた。

今度は誰の番だろうか。

内容/あらすじ/ネタバレ

鍾馗の昇平とみわが芝浦に魚をもらいに来ていた帰りのこと。火事で先に帰った昇平と別に、みわが一人で帰ろうとしたら、浪人者に囲まれた。だが、この危難を若い侍が救ってくれた。

享保六年(一七二一)の師走。車坂の石見銕太郎道場の師範の他に、老中水野忠之家の剣術指南役が加わっている金杉惣三郎。この石見道場に甲源一刀流の速水左馬之助雪雅が道場破りに現れた。速水は剣術大会のことを嘲笑した。

豊後相良藩の斎木高玖から呼ばれた惣三郎は藩邸に向かった。もはや帰藩は叶わないものと思っている惣三郎だが、戻ってこないかという。江戸家老の古田孫作が引退するからである。

だが、惣三郎はこれを断り、代わりに庵原三右衛門を推挙し、剣術指南役には棟方新左衛門を推挙した。

荒神屋の小頭・松造が偶然耳にしたことを話した。惣三郎を狙う者がいるというのだ。惣三郎はこれを念のため大岡忠相の内与力・織田朝七の耳に入れることにした。

もしかしたら、この件の裏に尾張の兄弟がいるかも知れない…

この頃、武者修行にでている清之助は肥後熊本にいた。二天一流の祖・宮本武蔵の足跡をたどることを一つの目的としていたからである。そして、人吉に南下しタイ捨流の丸目蔵人佐の足跡もたどることになる。

石見道場に別の道場破りが現れた。以心流の鳥羽冶助と名乗り、惣三郎を名指しした。そして、この勝負のあと、鳥羽冶助は真の敵は尾張柳生であると告げた。

その尾張柳生が早速姿を現した。沢渡鵜右衛門と名乗り、剣術大会の当夜に刺客を放ちおって、と罵る。惣三郎には全く身に覚えのないことである。

どうやら、剣術大会で第一となった柳生六郎兵衛が亡くなり、それが惣三郎が放った刺客によってのことだと勘違いしているようだ。このままだと、尾張柳生を敵に回すことになる。一剣客にはあまりにも巨大な敵である。

誤解を解く必要がある。江戸柳生の柳生俊方に事情を話し、調べてもらうことにした。

みわの様子がおかしい。どうやら恋をしているようだ。それは、みわを助けてくれた若侍である。名を軽部駿次郎という。

惣三郎を狙うのは尾張柳生の四天王と呼ばれる剣客達である。その一人は沢渡鵜右衛門であった。そして、残りの三人の内、法全正二郎という若者は危険な臭いのする剣客であった。

こうした中、みわが何者かに連れ去られた…。

本書について

佐伯泰英
悲恋 密命・尾張柳生剣
祥伝社文庫 約三六〇頁
江戸時代

目次

序章
第一章 暁暗の道場破り
第二章 以心流鳥羽冶助
第三章 桐十郎の祝言
第四章 清之助修行行
第五章 湯島天神の恋
第六章 仙台坂梅寺の決闘
終章

登場人物

庵原三右衛門
棟方新左衛門
速水左馬之助雪雅…甲源一刀流
鳥羽冶助…以心流
柳生俊方
柳生兵助
沢渡鵜右衛門…尾張柳生
大河原権太夫…尾張柳生
牛目幾満…尾張柳生
法全正二郎…尾張柳生
軽部駿次郎
西村桐十郎
野衣
牧野勝五郎…与力
鉄仙和尚
寺沢団輔…熊本藩町奉行
野中左膳