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佐伯泰英の『「密命」読本 小説・若き日の金杉惣三郎「虚けの龍」収録』を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ番外編の短編「虚けの龍」が収録。

若き日の金杉惣三郎が描かれている。まだ金杉の名を継ぐ前で、あやめとの出会いが描かれている。そして、日下左近という宿命のライバルとの関係も描かれている。

こうした番外編は度々あっても良いと思う。とても良い企画だ。

短編「虚けの龍」以外は作者へのインタビューであったり、登場人物の紹介などの企画ものが目白押しとなっている。

本書が出版されたのが、シリーズ十一と十二の間なので、シリーズ十一までの登場人物までしか書かれていない。

興味深かったのは、コラムとして書かれている豊後相良藩のモデルとなった、豊後佐伯藩のことである。これがなるほどと思わせる類似点が多いので、思わずにやりとしてしまう。

同様に興味深かったのは、”歩いてみた「密命」の江戸東京”の”強行軍の御江戸・芝~大川端編”である。歩いた経路を地図でものっけているので、これに沿って歩いてみるのも楽しいかも知れない。

だが、私はこの地図を見て、”こりゃ大変な距離だなぁ”と正直思った。実際にこれに近いところを散策したことがあるので、実感できるのだ。地図で見る限りたいした距離じゃないように思われるが、なかなかどうして。普段歩きなれていない人はこの半分の距離も歩けないことを保障する。

金杉惣三郎の愛刀といえば、豊前の刀鍛冶が鍛えた高田酔心子兵庫。これが作者の創作。そして、清之助の新藤五綱光も創作。だが、モデルとなる刀鍛冶が存在するもの事実のようで、それは本書で確認頂きたい。

「虚けの龍」

登場人物

深井惣三郎(後の金杉惣三郎)
深井章佑…父
深井田之助…兄
お軽…妹
綾川辰信…剣の師
日下左近
駒飼次郎丸
金杉由継…御右筆
金杉あやめ
天厳…和尚

内容/あらすじ/ネタバレ

元禄三年(一六九〇)、豊後相良藩。山野を一人の若者が息を切らして走っていた。一六歳になったばかりの深井惣三郎であった。

師・綾川辰信に呼ばれて、惣三郎はその荒々しい斬撃の本性を殺すことを覚えなければならぬ。受けの剣を身につけよと諭された。それが理解できないでいた。

直心影流綾川道場の龍虎と呼ばれている惣三郎にとって、剣は一つの希望であった。深井家の三男である惣三郎は部屋住みの身から唯一抜け出せるのが剣だったのだ。

惣三郎が城下外れの曹洞宗正玄寺を辞去しての帰り道、先ほど寺を出た若い娘の主従を男たちが襲っていた。どうやら人さらいのようである。惣三郎が助けたのは御右筆の金杉由継の娘・あやめであった。後日、惣三郎に礼があった。

参勤出府する若手家臣を激励する壮行試合が行われた。この試合の後、惣三郎は綾川道場の龍虎のもう一人、日下左近の取り巻きに絡まれる。そして…

本書について

佐伯泰英
祥伝社文庫編
「密命」読本
小説・若き日の金杉惣三郎「虚けの龍」収録
祥伝社文庫 約四四〇頁 江戸時代

目次

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「密命」番外・惣三郎青春篇 虚けの龍
闘牛から時代小説へ 佐伯泰英インタビュー
登場人物紹介
コラム:長屋暮らし/江戸町人お仕事拝見/江戸の豪商/江戸火消/町奉行と町方たち/江戸の船/剣術の聖地・鹿島/江戸の物見遊山/豊後佐伯藩/吉宗と女性/尾張・宗春の実像/江戸っ子的グルメ道
歩いてみた「密命」の江戸東京
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