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佐伯泰英の「酔いどれ小籐次留書 第7巻 子育て侍」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第七弾。前作最後で「駿太郎、縁あって赤目小籐次が育てることと相成った」ということで、赤子の駿太郎を育てることになってしまった小籐次。駿太郎は方々でかわいがられ、その様子が微笑ましい。

だが、この駿太郎は老中・青山忠裕の一門につながる娘が産んだ子だったことで、騒動に巻き込まれていく。

そうそう、老中・青山忠裕といえば、「寄残花恋 酔いどれ小籐次留書3」などで小籐次と行動をしたおしんがいるはずなのに、今回は登場せず。残念。

これで、青山忠裕の篠山藩と一層深い繋がりが出来るのだろうか?水戸藩との繋がりは消えてはいないものの、行灯の一件は小籐次の出番がなくなりそうであり、しばらく水戸藩との関わりもなくなるのだろう。そのために、老中との接点を持たせたのだろうか?今後の期待といったところ。

ということで、今回は水戸家の出番はなかった。そうはいっても、駿太郎一色で、水戸家の出番があるはずもないのだが。

そのかわりというわけではないが、追腹組が久々に本格的な暗躍をしそうな気配。このところ、散発的な襲撃しかしてこなかった追腹組を刺激した人物がいて、小籐次の口から、寝た子を起こしやがって、といった意味合いの呪詛が漏れる。

さて、孫六兼元を手に入れた小籐次だが、名刀・孫六兼元を使っての本格的な決闘シーンが本作で見られる。

内容/あらすじ/ネタバレ

文政元年(一八一八)の冬。赤目小籐次の目の先に赤子がすやすやと眠っていた。子連れの刺客須藤平八郎を討ち取り、赤子の駿太郎が託されたのだ。そして、武士の約定をした以上、小籐次は男手一人で駿太郎を育てる決意をしていた。だが、周囲は心配していた。

駿太郎の父・須藤平八郎は老中・青山忠裕の家臣で馬廻り役百十三石、新陰流の免許持ちであった。母は小出お英。だが、このお英が生きているのかどうかが分からない。

久慈屋の大番頭観右衛門は青山忠裕の篠山藩に探りを入れてみるという。

いつものようにうづと一緒に商いをしていると、深編笠の武家二人が駿太郎を見つめているのに小籐次は気づいた。その矢先、竹藪蕎麦の蕎麦打ちの半次が削り節を盗んだ小僧を追いかけ現われた。その騒ぎの中、駿太郎を見つめていた武家の二人は姿を消していた。

小出お英の正体が分かった。老中・青山忠裕の一門につながる家柄だという。お英と須藤平八郎とのことは藩内では有名な話となっているようだ。

一方で、小出家では長らく閑職に甘んじていたのを何とか出世の糸口にと、お英を藩主・青山忠裕の側室にしようと画策していた。その矢先に須藤平八郎とねんごろになり、駿太郎を孕んだのだ。

小出家の当主・小出貞房が赤目小籐次とは何者ぞと、小城藩を始めとした御鑓拝借に絡んだ四藩に訪ね回ったそうだ。小籐次は寝ている子を起こすようなことをして、と大いに怒り驚いた。こうした中、古田寿三郎と伊丹唐之丞が小籐次を訪ねてきた。

一方で、お英が須藤平八郎を追って江戸に出てきている節があるとしらされた。

研ぎの仕事をしていると、稲村右源太という浪人が刀の研ぎをしてもらいたいと言ってきた。それも明日までに。小籐次は実戦に使える刀の研ぎを心がけることにした。

稲村右源太は仇討のために国を出たのだという。だが、剣術の腕はそれほどでもなく、敵はそうとうの手練れである。いつしか右源太は竿をつくることで生計を立てるようになっていた。腕の良い職人になっていたのだ。

それが先日文が投げ込まれた。敵の田村兵衛からのもので、尋常な果たし合いをというものだ。

小籐次の前に小出家老女の東雲が現われた。駿太郎を返してくれという。だが、小籐次はすぐには駿太郎を返さないことにしていた。その駿太郎が、久慈屋の小僧・国三が世話をしている時に、国三共々消えてしまった…。

本書について

佐伯泰英
子育て侍 酔いどれ小籐次留書7
幻冬舎文庫 約三一五頁
江戸時代

目次

第一章 貰い乳
第二章 連夜の刺客
第三章 助太刀小籐次
第四章 冬の長雨
第五章 佐渡からの刺客

登場人物

捨吉
おさと…捨吉の姉
小出お英
東雲…小出家老女
小出貞房…お英の父
小出雪之丞…お英の兄
円通寺儀助
佐々木赤衛門…篠山藩年寄
稲村右源太
おさん…右源太の女房
田村兵衛