佐藤雅美の「半次捕物控 第3巻 命みょうが」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

前作で何かとあったお志摩と半次が夫婦となった。

そして、今作品では新たな登場人物が加わる。半次が疫病神という蟋蟀小三郎である。蟋蟀小三郎は三一長屋で狐目の女の子分や血洗いノ鮫五郎の件、島帰りの佐七の件で半次を助けることになるが、そもそも何者なのかが分からない。

蟋蟀小三郎などというふざけた名前は本名であるはずはない。かすかな西国訛りと、めっぽう立つ剣の腕位しか手がかりがない。

蟋蟀小三郎の正体を突き止める上での重要な役割を果たすのが、新たに半次の手下に加わった煙管屋の小僧をしていた伝吉である。そして、この蟋蟀小三郎の正体を物語の後半で突き止めることに成功する。

半次という岡っ引は、ある意味ダークヒーローである。今まで多くの作家によって描かれてきたような正義の岡っ引ではない。

さらに、半次の手下も脛に傷のある連中ばかりである。半次は現実的な岡っ引である。面倒なことがあれば、それを避けたいと思う普通の神経の持ち主なのだ。

正義感から余計なことには首は突っ込まない。だから、悪も見逃すことがある。そして、事が面倒になれば、事件を闇に葬ってしまおうと考える岡っ引なのである。そういう意味では、今までにない岡っ引であり、ダークな印象を与える岡っ引でもある。

だが、ダークではあるがダーティではないのが半次という岡っ引でもあり、それが魅力ともなっている。

一方、今作で登場する蟋蟀小三郎はダークな存在である。そして、ある面ダーティさを臭わせる存在でもある。本物の悪党なのか?それは、次回作でも登場するので、徐々に分かっていくことだろう。

さて、本作品でも佐藤雅美の時代考証で興味深く思った転がある。それは、鳥を捕ってはいけない場所”御留場”を広範囲にしていたことである。

それが、江戸日本橋より十里四方が範囲で、東海道なら戸塚、甲州街道なら日野、中山道なら桶川、日光街道なら杉戸がその範囲である。何とも広大な範囲を御留場としていたことか。

内容/あらすじ/ネタバレ

古着屋阿波屋の一人娘・あゆに痴漢を働いた侍がいた。側にいたは組の若い衆が侍を懲らしめようとしたが、逆にやりこめられてしまう。だが結局、十手持ちが現れたことで侍はおとなしく捕まった。

だが、この侍は名を名乗らず黙秘を続けた。この黙秘のおかげで侍は大番屋に留め置かれることになった。これが長くなり、かつは組の連中が放免されるのを待ちかまえている。侍にやられたのを仕返ししようと待ちかまえているのだ。

困り果てたのは侍に関わっている十手持ちである。そこで、は組を束ねる一番組の頭取に顔が利く半次には組への取りなしを求めた。半次はこれを引き受けた。

半次は早速問題の侍に会いに行く。相変わらず名乗らない。半次は自分の責任で、この侍を放免にすることにした。

大番屋を出た侍は古着屋阿波屋へ向かった。自分を痴漢扱いしたことを謝ってもらうためだ。侍は店先で蟋蟀(こおろぎ)小三郎と名乗った。偽名であろうと半次は思った。そして、この後、半次は蟋蟀小三郎を自分の所に寄宿させた。

ここから半次と蟋蟀小三郎のややこしい関係が始まった。

この間、銅物屋蔦谷の主人が殺される事件が起こった。事件はある事がきっかけで片が付く。が、この事件は蟋蟀小三郎が一体何者であるかを考えさせられる始まりともなった。

この後も事件が続き、その度に蟋蟀小三郎が半次の前に現れる。それは、半次を助ける場合もあったが、事によっては蟋蟀小三郎に疑いがかかる場合があった。

一体蟋蟀小三郎とは何者なのか?なぜ自分の正体を明かそうとしないのか?

本書について

佐藤雅美
命みょうが
半次捕物控
講談社文庫 約三八五頁
連作短編
江戸時代

目次

第一話 蟋蟀小三郎の新手
第二話 博多の帯
第三話 斬り落とされた腕
第四話 関東の連れション
第五話 命みょうが
第六話 用人山川頼母の陰謀
第七話 朧月夜血塗骨董
第八話 世は太平、事もなし

登場人物

半次…岡っ引
弥太郎…半次の手下
三次…半次の手下
平六…半次の手下
千吉…半次の手下
伝吉…半次の手下
お志摩…半次の女房
お美代…半次の義理の娘
蟋蟀小三郎…侍
岡田伝兵衛…半次の上司
助五郎…岡っ引
おすみ…引合い茶屋の主
蔦谷次郎兵衛…銅屋主
謙吉…先妻の連れ子
狐目の女
血洗いノ鮫五郎
佐助
佐七…島抜けをした男
松平将監…七千石の旗本
山形屋幸兵衛…小間物屋
お千代…山形屋の娘
政五郎…博奕の親分
新三郎…政五郎の子分
茂兵衛…饂飩屋利休庵主人
花田春海…御数寄屋坊主
山川頼母…丸岡有馬家用人
有馬四朗左衛門…丸岡有馬家一門
風間喜八郎…御小姓
武蔵屋…高級料理屋

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