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佐藤雅美の「八州廻り桑山十兵衛 第4巻 江戸からの恋飛脚」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

連作短編。

東奔西走とはこのことか。よくもまぁ、ここまで各地を廻村するものだと感心してしまう。が、忙しすぎて、読んでいて少し気疲れしてしまう。

今回は、桑山十兵衛にも恋の話が巡ってきて、これがどうなるのかが一つの読みどころだろう。親の十兵衛の恋の話はいいが娘の八重はどうなってしまっているのか…。

今回もコミカルな場面があり、これも一つの楽しみ。例えば、こんな場面。

『どうやら連中のほうが根負けしたらしい。事情はさっぱり分からないが、分かったような顔をして、
「やっと白状する気になったか」』

くすりと笑えてしまう場面だ。

さて、今回の大きな話が会津若松松平家を巡る話。

世に松平姓は多く、十八松平といって、十八家ある。これに分家別家がごろごろしているのだから、必然松平姓は多くなるというものだ。嘘のような本当の話として、牛込のほうに、食うに困って魚の棒手振りをやっている松平家の当主などというのもいたそうだ。

その松平姓の一つだが、こちらは名門の会津若松松平家。会津若松松平家は領地が二十三万石だが、ほかに預り地があり、これらを足すと三十三万石から三十五万石になる。

諸藩の中で大きい順に、加賀前田家百二万石余以下、島津、伊達、細川、黒田、浅野と続く。七番目の毛利が三十六万九千石。八番目の鍋島が三十五万二千石だから、実質七番目か八番目になるそうだ。

内容/あらすじ/ネタバレ

高原新田笹ノ沢の霊風

雇足軽の五兵衛が日光を見たことがないので見たいという。いそぐ廻村でもないと思い、桑山十兵衛はそれを許した。

今市に泊まることにすると、宿の主が神々しいばかりに美しい十五、六のお姫様とそのご一行を追っているのではないかという。そんなはずはなかったのだが、どうもその一行は不審に思えるという。

それとは別に、今度は殺しがあったという。五兵衛の日光詣ではなくなってしまった。

白旗村への誘い

悪党者を追っている内に、八州廻りの管轄外にきてしまった。ついでだからと、熱海で湯治をすることにした。泊まろうとする宿には戸田信濃守奥方宿とある。今をときめく御用御側という公方様の側近。金があるということだ。

この熱海で大多喜の惣五郎をみかけた。管轄外なので下手に動くとややこしくなる。手を出すつもりはない。

その湯治が終わり、江戸に戻ると早速に留役の川端三五郎から顔を出すように言われた。そして、熱海でかたりがあり、十兵衛が一味として疑われているという。かたりは戸田信濃守奥方が行ったという。

五つで売られた飯盛女

銚子にいく途中で道に迷った十兵衛一行。たまたま見つけた民家に泊めてもらうことにすると、そこで神々しいばかりに美しいお姫様ご一行の話を再び聞くことになる。

その後、銚子につくと、ややこしい一件が待ち受けていた。二十歳になるきよという娘が飯盛奉公をしているのがわかった。だが、きよは本来は飯盛奉公をしているはずがない。なぜそうなってしまったのかを調べてくれというのだ。

江戸からの恋飛脚

厚木の方面へ廻村に出た十兵衛。賭場を巡る争いで賭場を仕切る重五郎の子分の為蔵が殺された。内済で終わらせるようにしたいのだが、これがなかなかすんなりといかない。そのうち、重五郎を裏で操る人物の顔が見え隠れし…

十と一つの花嫁の涙

登勢が十兵衛を訪ねてきた。登勢には見合いの話が来ており、相手は千八百石。登勢に恋心を抱いていた十兵衛はすっぱりとあきらめることにした。が、登勢の甥・格之進が心中の疑惑をかけられているから、助けてくれと頼まれてしまう。

隠すより現る

江戸に戻ると真田九右衛門から呼び出しがあった。火急の用だという。

会津若松松平家の現当主は二代将軍秀忠の血筋を引いておらず、奇怪なことに水戸の血を引いているという噂がある。将軍家斉は御三家を一橋家の血で制覇したいという思いがあり、この話が真なら格好の取引材料となる。

そこで御庭番を送ったが、一人は帰ってこず、一人は事実の確認が出来なかった。御庭番の力も能力も落ちてきているのは周知の事実。そこでといっては何だが、十兵衛に白羽の矢が立ってしまった。

勢至堂宿の馬泥棒

会津若松に入った十兵衛は絵師として身分を変え、聞き込みにはいるが、まるで引っかかりがない。その内、現当主の生母が生きていることが分かった。

帰ってこなかった御庭番・川村助十郎の方から十兵衛に連絡があり、詳しく話を聞くことができた。
思い立ったが吉日

九死に一生を得た十兵衛が江戸に戻ると…

本書について

佐藤雅美
江戸からの恋飛脚 八州廻り桑山十兵衛
文春文庫 約三四五頁
江戸時代

目次

高原新田笹ノ沢の霊風
白旗村への誘い
五つで売られた飯盛女
江戸からの恋飛脚
十と一つの花嫁の涙
隠すより現る
勢至堂宿の馬泥棒
思い立ったが吉日

登場人物

桑山十兵衛…関東取締役出役(八州廻り)
八重…娘
粂蔵…十兵衛の小者
五兵衛…雇足軽
佐平…老僕
鏑木彦四郎…十兵衛の実兄
登喜…彦四郎の妻
藤縄弥五郎…関東取締役出役(八州廻り)
加賀美徳蔵…関東取締役出役(八州廻り)
松浦伊勢守…公事方勘定奉行
真田九右衛門…組頭
川端三五郎…留役
登勢
田所玄蕃
宮部右京

高原新田笹ノ沢の霊風
 幸七…今市の宿の主
 喜助…中附(馬借)
 嘉六…馬指

白旗村への誘い
 今井半太夫
 戸田信濃守奥方
 大多喜の惣五郎

五つで売られた飯盛女
 きよ
 利右衛門
 惣兵衛
 伊平次

江戸からの恋飛脚
 勘助
 酒井の彦次郎
 重五郎
 為蔵
 真田仁兵衛

十と一つの花嫁の涙
 格之進
 ちせ
 新藤甲子七
 田宮伊賀

隠すより現る
 みき
 岩槻ノ友五郎
 権兵衛…みきの父親
 平六…みきのおじ

勢至堂宿の馬泥棒
 庄兵衛
 川村助十郎