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佐藤雅美「物書同心居眠り紋蔵 第3巻 密約」の感想とあらすじは?

この記事は約4分で読めます。

短編集と言うよりは、連作短編です。

本書では、紋蔵の父親の死に関して不審な点が浮かび上がってきたところから、その死の真相を突き止めるまでが大きな柱となっています。

本書の題「密約」も、最後まで読めば納得のいく題名となっています。

さて、この過程で紋蔵は、シリーズ初めての格好良さをみせます。

あれれ?いつもの紋蔵とはちょっと違うぞ?

いつもは軽く見られている安藤覚左衛門に「いや、正直舌を巻いておる」と言わしめるほどの冴えを見せた紋蔵。

今回の紋蔵はなかなかやります!

さて、本書より問題児の文吉が藤木家に合流します。

この文吉の活躍(いたずら)は、シリーズが進むにしたがって如何に発揮(エスカレート)していきますが、それこそが楽しみとなります。

もちろん、紋蔵にとっては頭痛の種となるわけですが…。

内容/あらすじ/ネタバレ

貰いっ子

遠藤庄助という旗本の用人が女郎屋の親父、久兵衛なる男を「無礼討ち」をした。

この遠藤庄助と久兵衛にはなにやらいわく付きの関係がありそうで…。

一方、遠藤庄助の一人息子文吉が、紋蔵の家に転がり込んできた。

紋蔵が文吉に会ったときに、困ったことがあったらいつでも訪ねておいでといったことを真に受けたのだ。

この文吉が、そうとうの腕白小僧で…

へのへのもへじ

藤木家の一員に収まった文吉。

その文吉が通う手跡指南所でお披露目があったが、文吉が書いたのはよりによって「へのへのもへじ」。

見物人の笑いを取るが、その見物人に混じっていた料理人喜八が意外なことを口にする。

女軍師

大きな身代相続に絡んで、様々な人のいろんな思惑が入り乱れ…。

また、文吉の父親である遠藤庄助は遠島に決まり、紋蔵と文吉は見送りにでる。

一方、父に世話になったという源次が、父の死に関して不審な点があると紋蔵にもらした。

父の死の真相は?

盗っ人宿の置き手紙

与力沢田六平に命ぜられ、奉行所地代取り立てにいくことになった。

井筒屋という店が地代を滞らせているのが原因であったが、この井筒屋が…。

そして、父親の不慮の死に疑問を持ち始めた紋蔵に、刺客が襲いかかる。

お民の復讐

お民は弥三郎に再度甘言を言われ、もてあそばれた。

義母はこの件に関して紋蔵に相談に乗ってあげてもらいたいと頼んできた。

それには、理由があった。

安い物件がでたので、それを買取って義父に商売を再開してもらいたいとの義母の願いがあるのだ。

その物件を買い取るために、必要な金を借りる相手が、弥三郎に関係していた。

夜鷹の自訴

破落戸四人がよその人を袋だたきにして殺してしまった。

お定めでは、最初に暴力をふるった人間が”下手人”となる。

そのため幸吉という男が下手人と目されたが、蜂屋鉄五郎は納得がいかず、紋蔵に内密の調査を命ずる。

命ぜられた紋蔵だが、父の不慮が頭から離れず、今ひとつ仕事に身が入らない。

漆黒の闇

父の死の真相を知るために、紋蔵は決心をして、一月の休みを取った。

そして、探索を続ける内に、髪結いの栄次に不審を憶える。

紋蔵は事情を話して、大竹金吾の助けを借りる。

金吾はかわりに、井筒屋に関する疑問に答えて欲しいと(「盗っ人宿の置き手紙」)いうが、紋蔵は勘弁して欲しいと頭をさげ、金吾もあきらめる。

黒幕の黒幕

紋蔵は髪結いの栄次から辿って、ついに納得のいく解答に辿り着いた。その紋蔵が辿り着いた、父の不慮の死の真相とは?

本書について

佐藤雅美
密約 物書同心居眠り紋蔵3
講談社文庫 約三七〇頁
江戸時代

目次

貰いっ子
へのへのもへじ
女軍師
盗っ人宿の置き手紙
お民の復讐
夜鷹の自訴
漆黒の闇
黒幕の黒幕

登場人物

藤木紋蔵

紋次郎(次男)
麦(次女)
妙(三女)
文吉(養子)
六兵衛(義父)
お初(義母)
蜂屋鉄五郎…三番組の吟味方与力
蜂屋鉄哉…蜂屋鉄五郎の次男
大竹金吾…三番組に属する定廻り
安藤覚左衛門…年番与力で筆頭与力
沢田六平…年番与力
山崎喜平次…吟味方与力
捨吉…大座配の親分株
喜八…料理人