いつもの紋蔵らしい事件の解決からはじまり、最後はいつものように格好の良くない中年男性で終わります。
また、藤木家の様子も、子供達が成長している様子も随所に描かれています。
さて、本書の最後の二編。『烈女お久万』で「紋蔵、なかなかやるじゃないか」と思っていたら、続く『伝六と鰻切手』で「なんとも、お気の毒に」となり、二編の落差の違いにニヤリとしてしまいます。
最後は紋蔵らしく終わるこの作品は、今まで通り面白いです。
また、いたずらっ子の文吉が今後どのように成長していくのか、堅気になるのかそうでないのか、いずれにせよ大物の予感を感じさせます。今後の展開が何とも楽しみです。
内容/あらすじ/ネタバレ
早とちり
庖丁人頭の喜八が紋蔵に頼んだことを端に発して、思いがけない事件へと発展する。
老博奕打ち
鮫洲の仁吉は博奕打ちの親分だが、あこぎな稼ぎはしない。もちろん人殺しはしない。その仁吉が子分に人殺しを命じた罪で捕えられた。しかし…
金吾の口約束
不意に見知らぬ人に襲われたとの訴えがあった。容疑者として恭次があがったが、恭次は身に覚えがないという。そして、金吾が受けていた相談事と絡まっていく。
春間近し
宮田次郎兵衛は部下の失態で、責任と取って致仕を申し出たが、事態は急転していく。
握られた弱み
おいねには好いた人がいたが、事件の当事者として小伝馬町に入れられていた。そんな折、火事があった。おいねが火事現場の方から来たのを目撃したという子供がいるが…
呪われた小袖
強盗殺人で死んだ旗本の妻の小袖を巡り、次から次へと犯罪人を出すことになる。しかし、徐々に真相へ近づいていく。
烈女お久万
若後家が役者を囲っていた家が、その町の若者によって壊された。そのことが男を売っている不動岩五郎と一番組い組の頭との意地の対決になる。仲裁を頼まれた紋蔵は…
伝六と鰻切手
捨吉に鰻を馳走になっていたときに、伝六という男が捨吉に会いに来た。この伝六、かなり図々しい男で、紋蔵は伝六に振り回されることになる。
本書について
佐藤雅美
老博奕打ち 物書同心居眠り紋蔵5
講談社文庫 約三七〇頁
江戸時代
目次
早とちり
老博奕打ち
金吾の口約束
春間近し
握られた弱み
呪われた小袖
烈女お久万
伝六と鰻切手
登場人物
藤木紋蔵
里
紋次郎(次男)
麦(次女)
妙(三女)
文吉(養子)
六兵衛(義父)
お初(義母)
蜂屋鉄五郎…三番組の吟味方与力
蜂屋鉄哉…蜂屋鉄五郎の次男
大竹金吾…三番組に属する定廻り
安藤覚左衛門…年番与力で筆頭与力
沢田六平…年番与力
山崎喜平次…吟味方与力
捨吉…大座配の親分株
喜八…料理人