ルネサンス歴史絵巻三部作の一作目です。
三作を通じて、マルコ・ダンドロとオリンピアが登場します。
内容ではオリンピアに触れませんでしたが、重要な登場人物です。
このオリンピアが一体何者なのかは本書で確認ください。
覚書/感想/コメント
本書は、外交サスペンスとでも言うべき内容であり、十六世紀当時のヨーロッパの国際情勢をふんだんに盛り込んでいます。
ヴェネツィアの「十人委員会」(C・D・X)が持つ情報網のすごさが体感出来るのも本書の魅力です。
また、本書のもう一つの魅力はロマンスです。ヴェネツィア特有の身分制度に基づくロマンスが、どのような結末をもたらすのか?是非本書を読んで確認してください。
シリーズは次のように進んでいきます。
「緋色のヴェネツィア 聖マルコ殺人事件」
↓
「銀色のフィレンツェ メディチ家殺人事件」
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「黄金のローマ 法王庁殺人事件」
内容/あらすじ/ネタバレ
聖マルコの鐘楼から人が飛び降りて死んだ。
マルコ・ダンドロはその死んだ人間を知っていた。マルコの知るその男は、自殺するような人間ではなかった。
疑問に思いながらも、マルコは道を急いだ。というのも、三十歳にしてヴェネツィア政府の元老院議員に選出されたマルコは会議に遅刻するわけにはいかなかった。
会議から解放されたマルコは死んだ男のことを考えながら帰路についていたが、誰かにつけられている。
そして、マルコをつけていたのは、幼友達のアルヴィーゼ・グリッティであった。アルヴィーゼはトルコにいるはずなのだが、結婚式の為にヴェネツィアに戻ってきたのだ。久しぶりの再会に旧交を温める二人であった。
やがて、マルコは「十人委員会」(C・D・X)に選出される。ヴェネツィアの政策を事実上決定する委員会であり、ヴェネツィアの元老院より真の意味でヴェネツィアの中枢に位置する組織である。
マルコは自分が若くして十人委員会に選出された理由を知った。ヴェネツィアを巡る状況は年々厳しくなっていた。当時大国と呼ばれる国の多くが専制君主制であり、かつ君主が有能であり、若かったからだ。
1527年当時で、トルコのスルタン、スレイマン、三十三歳。スペイン王かつ神聖ローマ帝国皇帝、カルロス、二十七歳。フランス王、フランソワ一世、三十三歳。イギリス王、ヘンリー八世、三十六歳。ヴェネツィアは難しい舵取りを迫られていたのだ。
マルコに課せられた使命は、アルヴィーゼと共に対トルコ政策を円滑に運ぶことであった。そのため、マルコは副大使としてトルコに送り込まれる。
マルコはトルコで再びアルヴィーゼと再会するが、アルヴィーゼの心の底には一つの秘めた思いがあった。
それは一体何なのか?
また、聖マルコの鐘楼から飛び降りた男は自殺なのか他殺なのか?
そしてヴェネツィアの舵取りはどうなるのか?十六世紀の国際情勢を舞台に、当時最高の情報網を持ったヴェネツィアが自身の存亡を賭けた駆け引きが始まる。
本書について
塩野七生
緋色のヴェネツィア
聖マルコ殺人事件
朝日文芸文庫 約三四〇頁
16世紀 イタリア
目次
夜の紳士たち
恥じいる乞食
元首グリッティ
ローマから来た女
舞踏会
船出
「C・D・X」
地中海
コンスタンティノープル
「君主の息子」
奴隷から宰相になった男
スレイマン大帝
二枚の図面
後宮の内と外
ロシア人形
エメラルドの指輪
選択の最初の年
海の上の僧院
迷路
謀略
金角湾の夕陽
断崖
オリエントの風
柳の歌
帰郷
牢獄
謝肉祭最後の日
エピローグ
登場人物
マルコ・ダンドロ…ヴェネツィア貴族
アルヴィーゼ・グリッティ…アンドレ・グリッティの庶子
アンドレ・グリッティ…ヴェネツィア元首
オリンピア…ローマから来た謎の女
プリウリの奥方(リヴィア)
リヴィア…プリウリの奥方の娘
ピエトロ・ゼン…トルコ大使
スレイマン…トルコのスルタン
イブラヒム・パシャ…トルコ宰相
ロッサーナ…スレイマンの愛妾