記事内に広告が含まれています。

塩野七生「ルネサンスの女たち」の感想とあらすじは?

この記事は約5分で読めます。

ルネサンスという時代の中を生きた女性を主人公としています。

特に、最初の三人。イザベッラ・デステ、ルクレツィア・ボルジア、カテリーナ・スフォルツァはチェーザレ・ボルジアが深く絡んだ人生を送っています。

そういう意味において、本書の後に続く「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」の習作として捉えてよい作品です。若しくは補足作品として捉えてもよいかもしれません。

いずれにしても、「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」と合わせて読むと、広がりの出る作品です。

この三人の中で印象の強かったのがカテリーナ・スフォルツァです。まさに女傑というにふさわしい女性です。

度肝をぬくのが、夫が殺された直後の、陰謀者たちとのやりとりである。

カテリーナ・スフォルツァは子供たちを人質に取られた際に、やおらスカートのすそをまくり、「何たる馬鹿者よ。私はこれであと何人だって子供ぐらいつくれるのを知らないのか!」と言い放ちます。

このとき彼女は二十五歳。ルネサンスという時代はこういう女性も生み出したと思うと、それはそれで凄い時代だったのだと感じます。

最後のカテリーナ・コルネールの話は、「海の都の物語」を読む際の補足作品となるでしょう。

カテリーナ・コルネールという女性に対するヴェネツィアの取る姿勢というものが、端的にヴェネツィアそのものを現わしているようにも思えるからです。

内容/あらすじ/ネタバレ

第一章 イザベッラ・デステ

イタリアの愛国者、ルネサンス芸術のパトロンとしてのイザベッラ・デステ。しかし、彼女はそのようなきれいごとに満ちた世の中を生きたわけではない。ルネサンスは芸術の満ちあふれた時代であるとともに、権謀術数の渦巻く時代でもあったのだ。

一四九〇年、イザベッラは一六歳で隣国マントヴァの当主フランチェスコ・ゴンザーガ侯爵と結婚する。

翌年、妹のベアトリーチェもイル・モーロと呼ばれたミラノ公国の事実上の支配者と結婚した。妹の結婚でイザベッラを刺激したのは、妹のすぐそばには大芸術家が大勢いることであった。

イザベッラの嫁いだマントヴァは豊かな国ではない。しばしばその国庫は空っぽになった。妹に対抗するには、イザベッラ自身が教養の高さで多少は知られていたその名をさらに高めることであった。

しかし、政治の世界が彼女を芸術だけに奉仕させてはくれなかった。

イザベッラ・デステが三五歳の女盛りの年。ヴェネツィアと戦っている最中に夫・フランチェスコ・ゴンザーガ侯爵が敵に捕まってしまう。イザベッラは夫を自由の身にすることと、夫のいない間のマントヴァを守り抜くという試練が待ち受ける。

第二章 ルクレツィア・ボルジア

ルクレツィア・ボルジアの悲劇の生涯は、父の法王即位から始まる。父・アレッサンドロ六世と兄・チェーザレ・ボルジアという非凡な男を身内に抱えた者の悲劇が彼女の人生であった。

ルクレツィアの結婚は政略結婚という形で始まった。相手はペーザロ伯である。しかし、この最初の夫とは、父・アレッサンドロ六世の策略により別れさせられてしまう。

次の夫・ビシェリエ公との結婚は、兄チェーザレ・ボルジアの野望のためであった。チェーザレはこの結婚の後すぐに枢機卿の地位を投げ捨てた。そしてすぐに剣を取るのである。このビシェリエ公との結婚もやがて終了する。今度はビシェリエ公が暗殺されたのである。

そして、三番目の夫。これも兄・チェーザレ・ボルジアの野望のために結婚する相手である…。

第三章 カテリーナ・スフォルツァ

一ヶ月にもわたる籠城戦を耐え抜いた守備軍が敵の侵入をいとも簡単に許した。そのことをカテリーナ・スフォルツァは理解できなかった。

しかし、これは傭兵隊長の裏切りがあったためであった。一五〇〇年のこと。カテリーナ・スフォルツァは三十七歳であった。

このカテリーナ・スフォルツァを攻めたのがチェーザレ・ボルジアであった。

さて、このカテリーナ・スフォルツァとは一体どういう女性であったのか?

第四章 カテリーナ・コルネール

ヴェネツィア貴族の十四歳の娘・カテリーナ・コルネールが嫁ぐ相手は二十八歳のキプロス王ジャコモ二世である。しかし、カテリーナはすぐにキプロスに出発できたわけではない。そもそもこの結婚は、ヴェネツィアの外交政策としての要素が強く働いている。

カテリーナがキプロスに向けて出発したのは四年後の十八歳になった年である。しかし、カテリーナの結婚生活は短かった。夫ジャコモ二世が原因不明の病で死んでしまったのである。

この後、キプロスはその王位を巡って様々な勢力の思惑が入り乱れる。カテリーナの祖国であるヴェネツィアも動き始め…。

本書について

塩野七生
ルネサンスの女たち
中公文庫 約三三五頁
15世紀末~16世紀頭 イタリア

目次

第一章 イザベッラ・デステ
 政治と美
 姉と妹
 力との出会い
 悲劇的間奏
 マントヴァ防衛
 成熟
 サッコ・ディ・ローマ
 晩年

第二章 ルクレツィア・ボルジア
 歴史と女
 ボルジア家の人々
 白い結婚
 闇の中
 法王庁の惨劇
 ローマを離れて
 フェラーラ
 一五〇三年、夏
 青春の死

第三章 カテリーナ・スフォルツァ
 序
 野武士の中から
 ローマ
 「イタリアの女傑」
 敵・ボルジア
 一人の女
 エピローグ

第四章 カテリーナ・コルネール
 水の上の都
 キプロス島の歴史
 「私生児ジャコモ」
 レヴァンテの海
 ファマゴスタの乱
 大国の政治
 最後の反抗
 「キプロス併合」
 帰郷
 終焉

登場人物

第一章 イザベッラ・デステ
 イザベッラ・デステ
 フランチェスコ・ゴンザーガ侯爵
 ベアトリーチェ…妹
 イル・モーロ
 チェーザレ・ボルジア

第二章 ルクレツィア・ボルジア
 ルクレツィア・ボルジア
 チェーザレ・ボルジア…兄
 アレッサンドロ六世…法王・父
 ペーザロ伯…最初の夫
 ビシェリエ公…二番目の夫
 アルフォンソ・デステ…三番目の夫
 ピエトロ・ベンボ

第三章 カテリーナ・スフォルツァ
 カテリーナ・スフォルツァ
 チェーザレ・ボルジア
 ジャコモ・フェオ
 ジョヴァンニ・デ・メディチ

第四章 カテリーナ・コルネール
 カテリーナ・コルネール
 ジャコモ二世…キプロス王
 モチェニーゴ…ヴェネツィア提督