
藤沢周平「時雨みち」の感想とあらすじは?
「帰還せず」と「滴る汗」は藤沢周平には珍しい公儀隠密もの。印象に残る作品は「山桜」と「亭主の仲間」。「山桜」が2008年に映画化されました。
個人的に、鬼平シリーズの中で、本書が最も長谷川平蔵が格好良く書かれている作品だと思う。特に最後の場面は、思わず"目頭が熱く"なってしまった。
今ひとつピリッとした感じがない。平蔵ら火付盗賊改方の派手な大立ち回りや、なじみの密偵達の華々しい活躍が乏しく感じられるためだろう。唯一「流星」がスケールを感じる短編である。
主立った登場人物が登場しつくし、登場人物が落ち着いてきている。本作で印象に残るのが、「大川の隠居」である。火付盗賊改方に盗っ人が入り込み、その盗っ人と平蔵の駆け引きがとても面白い作品である。
本書、第二話「谷中・いろは茶屋」で同心の中でも憎めない登場人物の木村忠吾が初登場する。本書では二話で主要な役割を果たす。また、小房の粂八と相模の彦十は密偵として板に付き始めてきているようである。
仕掛人の世界と盗賊の世界。本書はある意味「鬼平犯科帳」の盗賊の世界と「仕掛人・藤枝梅安」の香具師の世界を同時に楽しめる、かなりおいしい作品である。