覚書/感想/コメント
シリーズ第十三弾。前作では旗本の御家騒動に巻き込まれたが、今回は長屋の存亡の危機に巻き込まれる。
滝造という男が長屋に越してきてから物語が始まる。滝造は何かと難癖をつけて長屋の住人達とトラブルを起こす。
どうも何か魂胆があるようだが、それがわからない。それがわからないうちに、次から次へと滝造の仲間達が長屋に引っ越してくる。
そもそも、請人がないと越してこられない。請人は同じ。しかも長屋の持ち主の三崎屋も了承している。
一体誰が、何の目的で、長屋の住人達を追い出そうとしているのか!?
そして華町源九郎達は長屋に住み続けることができるのか!?
…まぁ、結論はわかっているのだが。
今回の話しの、最後の最後に、
『「華町、これが用心棒代だな」
菅井が源九郎に身を寄せてささやいた。
「たまには、こういう礼金も悪くないな」』
という台詞がある。
さて、ここでクイズです。
今回の用心棒達の用心棒代はいくらだったのでしょうか?
前回、お吟が登場していないのが少々寂しいと書いていたら、早速今回お吟が登場してくれた。
とはいっても、派手に活躍するわけでもないので、ちょっぴり不満である。どうせなら、お吟にももう少し活躍してもらいたいと思ってしまう。
内容/あらすじ/ネタバレ
半月ほど前に長屋に滝造という男が越してきた。お熊などは嫌なやつが越してきたと嫌悪しているようだ。
その滝造が孫六と言い争いになっている。孫の富助の泣き声がうるさいと怒鳴り込んだのだ。
菅井紋太夫がいう。滝蔵の嫌がらせに耐えかねて長屋を出て行く住人がいるのだとか。
華町源九郎は大家の伝兵衛に会うことにした。
滝造の請人は料理茶屋の升田屋で、はぐれ長屋の持ち主である三崎屋東五郎の店で番頭をしていた甚五郎だという。
三崎屋東五郎からも話しがあり、断れなかったともいった。
源九郎は何か訳があって長屋でもめ事を起こしていると思っている。だが、それは一体何なのか。
長屋に一人の牢人が越してきた。深田練次郎という。続いて越してきたのが、町人の常三郎と牢人の河上左内。この三人は滝造の仲間らしい。
やはり請人は升田屋だった。
茂次が滝造らにやられた。
源九郎は菅井達と密談をすることにした。なぜ滝造たちは長屋の住人達を追い出そうとしているのか?それと、黒幕は誰なのか?
牢人の深田と河上は三崎屋東五郎と何か関わりがあるようだ。三崎屋は三太郎が探ることになった。
滝造と常三郎は孫六があたることにした。孫六は浅草諏訪町の勝栄に栄造を訪ねた。
三崎屋東五郎はこの三月ほどほとんど店を出ていないことがわかった。
この東五郎に直接会った源九郎は東五郎と深田達の間でのっぴきならぬことがあったのではないかと思った。
菅井がやられた。名はわからないが、滝造たちの仲間であるようだ。
源九郎は策を講じた。孫六達に源九郎が長屋を出て行くつもりらしいという噂を流させたのだ。そのため、源九郎は滝造たちの監視の目をかいくぐることができるようになった。
その足で源九郎はお吟を訪ねた。お吟に三崎屋の何かをしらないかと聞くと、最近は倅の房次郎の姿を見ないという話しを小耳に挟んだという。
急に大家が伝兵衛から滝造に代わることになった。さっそく滝造は店賃をあげると宣告してきた。
依然として滝造たちが住人を追い出そうとしている理由がわからない。
孫六達がつかんできたのは、もしかしたら黒幕かもしれない男のことだ。名を牧右衛門という。偽名かもしれない。この牧右衛門は入船町の親分といわれているらしい。
次第に事が明らかになってきた。升田屋の甚十郎がこの入船町の親分の開く賭場で遊んだのがつきで、賭場の借金がかさみ、いいなりになるようになったのだ。
そして、菅井を襲った牢人のことがわかった。平沼玄三郎というらしい。もう一人、深谷の稲次というのもいる。
さらに、房次郎を入船町の親分が預かっているということもわかった。
最後に、入船町の親分と呼ばれる男は伊勢蔵というらしい。
これでおよそのあらましはわかってきた。
本書について
鳥羽亮
はぐれ長屋の用心棒13
長屋あやうし
双葉文庫 約三〇〇頁
江戸時代
目次
第一章 ならず者
第二章 敵影
第三章 大家交代
第四章 黒幕
第五章 救出
第六章 ふたりの殺し屋
登場人物
華町源九郎
菅井紋太夫
茂次…研師
孫六…元岡っ引き
三太郎…砂絵描き
お吟…浜乃屋女あるじ
お熊…長屋の住人、助造の女房
おまつ…長屋の住人
元造…飲み屋「亀楽」の主
おみよ…孫六の娘
富助…孫六の孫
お梅…茂次の女房
吾助…浜乃屋の板前
庄太…長屋の子供
東庵…医者
栄造…岡っ引き
お勝…栄造の女房
村上彦四郎…南町奉行所定廻り同心
小笠原文蔵
伝兵衛…長屋の大家
三崎屋東五郎
房次郎…東五郎の倅
粂蔵…番頭
甚十郎
滝造
深田練次郎
常三郎
河上左内
信助
平沼玄三郎
深谷の稲次
入船町の親分(伊勢蔵)