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山田風太郎「江戸忍法帖」の感想とあらすじは?

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今回の山田風太郎の忍法帖は、いわゆる柳沢騒動を題材としています。

登場する忍者は甲賀忍者です。

天正十年の本能寺の変の折、徳川家康の三大危機のひとつ「神君伊賀越え」で伊賀忍者と甲賀忍者が護衛して難を逃れたという話があります。

本書では、この時の恩に報いるため、伊賀ものには四谷の伊賀町が与えられ、甲賀ものには駿河台の甲賀町が与えられたとしています。

甲賀町は今の甲賀坂の辺りです。坂を境に南北に甲賀町があったようです。

甲賀坂は明治大学のリバティタワーの前、日本大学病院や東京YMCAの通りになります。

本書では登場しませんが、四谷の伊賀町は四ツ谷駅から四谷三丁目駅方面に向かってすぐの左側一帯です。

以下はネタバレ満載です。ご注意ください。

内容/あらすじ/ネタバレ

神田橋門内の屋敷に柳沢吉保が甲賀七人衆を呼んで、先代将軍・徳川家綱のご落胤殺害を命じるところから始まります。

葵悠太郎は二十歳になっています。今の将軍・徳川綱吉には子がいませんので、葵悠太郎が名乗り出れば、六代将軍になります。

このことを柳沢吉保に教えたのは、葵悠太郎の家来と名乗る三人でした。

柳沢吉保は命じます。葵悠太郎を素浪人として討つこと、三人を徳川光圀に近づけないようにすること。

三人とは白髯が胸までたれている織部玄左衛門、六尺を超え髭に顔が覆われた里見隼人、額に三日月の刀痕のある伴兵馬です。

対する甲賀七人衆は、

  • 八剣民部(忍法肉鎧)
  • 天羽七兵衛(忍法むささび落し)
  • 鵜殿一風軒(忍法ながれ星)
  • 葉月(忍法陽炎乱し)
  • 粂寺外記(忍法霧閉じ)
  • 寝覚幻五郎(忍法幻五郎憑き)
  • 空蝉刑部(忍法空蝉)

です。

お茶の水の湯島聖堂の近く。里見隼人が襲われます。相手は忍者。忍法肉鎧の遣い手で、八剣民部と名乗りました。

同時に天羽七兵衛が里見隼人に襲い掛かりました。甲賀忍法むささび落しの遣い手です。

瀕死の里見隼人を見つけたのは丹吉と姉でした。すぐさまこの事を葵悠太郎に報告しに行きます。

里見隼人の亡骸を引き取った伴兵馬を忍者が襲いました。鵜殿一風軒と葉月です。そして伴兵馬も討たれてしまいます。

里見隼人と伴兵馬の屍骸を前に、葵悠太郎と織部玄左衛門、丹吉、姉のお縫が黙って座っていました。

里見隼人は織部玄左衛門の甥、伴兵馬は葵悠太郎の乳母の子でした。

そして織部玄左衛門は御子上典膳、小野善鬼と並ぶ伊藤一刀斎門下の三鬼人と言われた男でした。

その織部玄左衛門が水道橋で対峙したのが粂寺外記と寝覚幻五郎でした。

何とか二人を退けた織部玄左衛門は丹吉に先導させて水戸へ戻る徳川光圀を追いかけました。

織部玄左衛門が徳川光圀に伝えるべき事を伝え終えた矢先、寝覚幻五郎の忍法幻五郎憑きにかけられた小姓が織部玄左衛門を串刺しにしました。

忍者達を追いかけていた丹吉は忍者たちを見失うと、神田馬喰町のさいづち長屋へ戻りました。

丹吉がつけられたことに気づいた葵悠太郎はお縫と丹吉を連れて逃げることにしました。三人を襲ってきたのは六人です。

逃げる三人は両国橋を渡り垢離場に着きました。これからどうするか思案する葵悠太郎ですが何も思いつきません。

江戸に来る前に住んでいた足柄山に戻ろうかと考えていると、丹吉が置いてきた犬のタマを連れに長屋に戻って行きました。

タマは殺されており、そばに忍者が一人いました。天羽七兵衛です。

丹吉を心配して追ってきたお縫と葵悠太郎の目の前で丹吉が斬られました。

天羽七兵衛を斬り倒した葵悠太郎でしたが、丹吉は息を引き取りました。

天羽七兵衛の首を唖然と見ていたのは柳沢吉保と愛妾のおさめの方でした。

そこにおさめの方の妹で柳沢吉保の養女・鮎姫が現れ、鮎姫が首を見て驚愕します。

柳沢吉保の長子吉里は、将軍綱吉とおさめの方との間に生まれました。

これにより柳沢吉保は綱吉の急所をつかみ、あわよくば将軍家に世子が生まれなかったら…という野心がめばえました。

ところが前将軍のご落胤がこの世にあると知り愕然とした柳沢吉保が甲賀七忍に命じて葬ろうとしたのは、綱吉のためばかりではなかったのです。

また、吉里の他に重大な候補者・甲府中納言綱豊がおり、鮎姫を近づけるために養女としたのでした。

甲賀の忍者衆と柳沢吉保いる屋敷のまっただなかに葵悠太郎が現れました。

葵悠太郎は成り行きで居合わせていた鮎姫をさらって行きました。

牛込の蓮華寺。

さいづち長屋の駕籠かきの平六と銀十が駕籠を運んできました。

葵悠太郎はお縫に鮎姫と服を替えるように言いました。

葵悠太郎と着替え終えたお縫は駿河台の甲賀町へ向かいました。

甲賀町では忍者の総元締の服部玄斎が死期を迎えようとしていました。玄斎は葵悠太郎を討った者を孫の志乃の婿とし、棟梁にすることを約束しました。女忍者の葉月は、棟梁となり己の決めた相手を婿としてよいとしました。

葵悠太郎とお縫が甲賀町に現れました。しかし、逆襲は完全に失敗しました。鮎姫に変装したお縫を残して逃げるよりほかありませんでした。

玄斎屋敷で鮎姫として過ごすお縫を大きな下女が見張っていました。五人の忍者はどこかへ行っています。

お志乃がお縫を屋敷に戻れるようにすると言いますが、八剣民部がおり、上手く行きそうにありませんでした。

その八剣民部が殺されました。

お縫とお志乃が逃げようとした時、寝覚幻五郎が戻ってきました。

幻五郎はお志乃に幻五郎憑きの忍法をかけ、事の次第を吐かせました。お志乃は心を幻五郎に支配されてしまったのです。

恐るべき忍法を操る忍者と葵悠太郎の対決はどうなっていくのでしょうか。そして、お縫、鮎姫、お志乃の運命はいかに!

目次

甲賀七人
陽炎乱し
雪の血文字
幻五郎憑き
空蝉
泣け泣け子獅子
首の花
鮎姫様
美しき囮
甲賀忍者町
敵中の薔薇
鎧をぬぐ忍者
変身
女怪
死闘の蓮華寺
おんな獅子
一眼つぶれ一眼ひらく
虚によって影をうつ
三日のち葵の花散るべし
老竜出府
虎口と狼牙
二人刑部
いのちの渦
死ぬな鮎姫
武蔵野幻談
帰去来